研究課題/領域番号 |
23530970
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
河原 純一郎 中京大学, 心理学部, 教授 (30322241)
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キーワード | 疲労 / 注意 / ストレス |
研究概要 |
本年度は,注意の時間的配分を特徴的に示す現象である注意の瞬き(attentional blink)に及ぼす,急性ストレスの影響を調べる実験を行い,刊行した。急性ストレスを生じさせるためにTSST法を用いた。注意の瞬きは課題ごとに配分する資源が不足することで起こると考えられていた。急性ストレスは資源消費を起こすといわれている。こうした資源が共通のものであるならば,TSST法で注意剥奪が起こっているときに注意の瞬きの増大が起こると予測した。先行研究では,さまざまなタイプのストレスが混在しており,結果もそれに対応して一貫していなかった。従来の研究では情動価がABに与える影響は,正か負で異なっていると言われていた。Jefferies et al.(2008)は正負だけでなくて,覚醒度も加えた2次元で見た方が良いと示唆していた。しかし,彼女らは同時に,情動ごとに個別のかたちで注意とリンクしているのかもしれないと提案していた。これは推論でしかなく,実証研究はされていなかった。そこで,本研究では疲労に注目し,POMS尺度で疲労がとくに増大するような課題設定を用いた。実験の結果,6つのPOMS尺度の中では疲労がストレス操作後に上昇し,活力が低下したことから,TSST操作は有効であったと言える。加えて,TSST操作前後の唾液コルチゾール濃度を比較したところ,操作後に上昇していた。注意の瞬きはTSST操作を行った実験群のみで増大していた。さらに,この増大は最大効果が増えていただけで,時間的には統制群と同程度で回復していた。本研究の結果は情動の2軸説では説明できず,情動状態に対して個別の注意に対する影響があることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
査読者から詳細に統制条件について追加データと修正を求められたため,慎重に改稿した。時間はかかったがAttention, Perception & Psychopysics誌に刊行できた。また,ストレスと認知機能の関係について,潜在指標に基づく測定法に関しても近隣の研究領域(ストレス学会)からレビュー論文の依頼があったことも合わせて考えると,少しずつ成果が認知されてきていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
潜在的手法を使って認知機能にストレス・疲労が及ぼす影響を測定する実験を積極的に推進する。急性の筋疲労が同時に行う認知課題へ及ぼす効果を調べるための実験手続きと装置は既に開発済みである。これを用いた被験者実験を今年度は推進したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として,平成25年度は被験者実験と実験実施補助者用に見込んでいた謝金・人件費が大幅に抑制されたために未使用額が発生した。本所属に異動し,担当授業が増えたため,本研究室の実験内容が周知されやすくなり,結果として被験者参加数が増加した。このうち,学部授業紹介の一環としてコースクレジットを導入したところ,昨年に比べてこのシステムを使った大幅な参加者像があったため,謝金を拠出する機会が減少し,未使用額が発生した。 脳波測定のために比較的長時間(2.5h程度)の実験実施の割合を増やし,その実施補助者の雇用に充てる。加えて,唾液コルチゾールのサンプリング回数を増やした実験デザインを導入し,アッセイ外注費に充てる。
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