義務教育学校における学力評価システムの改善モデルを構築するために,文部科学省,教育委員会に対する聞き取り調査を行うとともに,学校に対する聞き取り調査と学力評価システムのモデル提示を行い,検討・吟味した。 学力評価について,多くの教育委員会においては,前回の改訂時の資料を基に一部修正し,内容の徹底を図り,また文部科学省の説明をそのまま徹底させていること,教育委員会独自の取り組みがなされず,とりわけ観点別評価の観点の工夫についてはほとんど意識されていないこと,すなわち,指導要録の参考様式の浸透に指導の重点がいき,学力の観点や行動の記録の項目の工夫や創造については意識が向いていないことなどが明らかになった。 学校現場においては,観点別評価と評定は一定程度定着しているが,教科によって文科省の示す参考様式では不具合が生じていること,関心・意欲・態度については評価しにくく,戸惑いがあること,また各観点については観点項目を1つのまとまりとして理解されており,各観点の中の項目毎について状況把握するということにはなっていないこと,教科間の観点項目の不統一についてはあまり問題にされていないことなどが明らかになった。 これらのことから,義務教育学校における学力評価システムの改善モデルについては,小学校と中学校における評価方法の関連性と一貫性や,教育課程経営のPDSサイクルの視点から考えることの重要性を明確にしたうえで,現行の観点別評価の観点を見直し,整理し,その結果,目標に基づく評価に目標にとらわれない評価を加え,3観点2段階評価と自由記述方式による学力評価システムモデルを提案した。このシステムが実現し,機能するためには,学校内の情報交換ネットワーク形成への努力と教育専門性に裏打ちされた校長・教頭等のリーダーシップが不可欠であり,それを支援する教育委員会の条件整備活動が必要であることを指摘した。
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