研究課題/領域番号 |
23530985
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
馬場 久志 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30208714)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 思考力 / 抽象語 / 学習活動 / 子どもの視点 |
研究概要 |
本研究は、人の思考力形成が本質的特性や関係などを表す抽象語の獲得と使用によって支えられるという観点から、学校教育および日常生活の中で出会う抽象語の範囲やそれらへの理解の実態を明らかにし、その獲得可能性を検討することを第1の目的とする。また学校の授業その他の生活場面において、抽象語や論理表現語を用いることが学習活動を促進させ得るかについて検討し、思考力形成についての知見を見いだすことを第2の目的としている。 1年次は、これまでに検討を始めていた漢字熟語を手がかりに意味理解度の低い語と抽象性との関わりについて検討するべく、漢字使用に関する各種調査を収集しながら、抽象語としての整理を行った。この作業は目下継続されており、この基礎の上に、小中学校で用いられている各種教材における抽象語や論理表現語の出現実態が整理されることとなる。また学校における観察の結果、文字教材以上に、授業場面や生活指導場面では口頭で抽象語が用いられていることが考えられたので、特別支援教育も含めた諸学校の学習場面にも対象範囲を広げることとなった。この作業は2年次に継続される。 また研究全般に関わる問題として、学校教育活動の目標を規準とする客観的な指標のほかに、子どもの活動としての観点から学習活動をとらえることを、新たな課題として設けた。そのために子どもと教員や親との認識のずれについて示された先行調査を整理した。おとなが「子どもにとって困難」ととらえていることがらを、子どもは困難としてではなくとらえる事例が散見され、抽象語を誤って理解するということでなく子どもなりに「理解」して用いているという評価のあり方が示唆されている。この視点で、抽象語の模倣的使用から思考が展開されることになるか、今後の追究課題が生じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
学習活動を、文字を媒介とするものに加えて口頭による語の使用をより重要な対象としてとらえ直したこと、また通常学校から特別支援学校に対象の重点を移したことから、調査方法の組み替えを余儀なくされたため、1年次計画の一部を2年次に持ち越している。
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今後の研究の推進方策 |
2年次は1年次から継続されている抽象語の整理を完了し、この基礎の上に、小中学校で用いられている各種教材における抽象語や論理表現語の出現実態を分析する。また特別支援学校も含めた諸学校の学習場面、生活指導場面における文字および口頭の語の使用についても対象とする。 また客観的な語意の正誤という観点だけでなく、子どもの活動としての観点から語の使用実態をとらえる。この背景問題として、子どものから見た学校活動と教員や親から見た活動とのずれについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
分析対象とする教材の収集のために図書関連費用を、また学習活動場面データの収集のためにビデオ関連費用を、またこれらの解析のためにコンピュータ関連費用を用いる。調査のため、質問紙やコンピュータ提示材料作成の消耗品費用を用いる。これらのデータ整理のために研究補助謝金を用いる。また中間成果の検討と発表のために旅費を用いる。
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