研究課題/領域番号 |
23530985
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
馬場 久志 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30208714)
|
キーワード | 抽象語 / 思考力 / 学校生活 |
研究概要 |
本研究は、人の思考力形成が本質的特性や関係などを表す抽象語の獲得と使用によって支えられるという観点から、学校教育および日常生活の中で出会う抽象語の範囲やそれらへの理解の実態を明らかにし、その獲得可能性を検討することを第1の目的とする。また学校の授業その他の生活場面において、抽象語や論理表現語を用いることが学習活動を促進させ得るかについて検討し、思考力形成についての知見を見いだすことを第2の目的としている。 1年次は、以前より検討を始めていた漢字熟語を手がかりに意味理解度の低い語と抽象性との関わりについてさらに検討するべく、漢字使用に関する各種調査を収集しながら、抽象語としての整理を開始した。この作業は現在も継続されており、漢字熟語にとどまらず小中学校で用いられている各種教材における高次概念語や論理表現語の出現実態を整理している。また学校における観察の結果、授業場面や生活指導場面において口頭で抽象語が用いられていることが考えられたので、2年次は、教員と児童生徒の音声言語交渉を新たな対象として、特別支援教育も含めた諸学校の学習場面や日常学校生活場面にも範囲を広げることとなった。この作業は3年次に継続され、試行的な場面観察から認識評価のための介入も含む観察の可能性を探ることとしている。 また子どもと教員など大人との認識のずれに関する諸研究から示唆を得て、客観的な理解指標から離れ、子どもなりの「理解」による活動の変化として抽象語の使用との関連をみる評価のあり方が、目下模索されているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
学校における観察の結果、文字教材の理解と関連して授業中の音声情報に対する理解の問題を検討する必要性が見いだされた。だがこれらを同時複合的に検討することは変数の多さから困難なので、口頭での教員指示や授業展開における抽象語の出現とその影響について、単独で検討をすることとなり、文字教材に対する作業を一時緩行させて、授業や日常学校生活における教員と児童生徒の口頭による語の使用を対象とする作業を先行させた。またこのことをより効果的に進めるため、通常学校から特別支援学校に対象の重点を移したことから、調査方法の再検討を行うこととなった。以上の理由による。
|
今後の研究の推進方策 |
1)当初より進められている小中学校教材における高次概念語の出現実態の整理を完了し、合わせて児童生徒の理解度について把握する。これらに基づいて、抽象語としての特徴と実態を明らかにする。 2)授業及び日常学校生活において教員指示や児童生徒との音声言語交渉で用いられる抽象語の使用特徴を検討し、問題点のみならず効力について整理する。 3)客観的な語意の正誤理解という観点だけでなく、子どもの活動としての観点から抽象語使用の機能をとらえる。このため特に特別支援教育における観察データを整理分析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
分析対象とする児童生徒用図書教材の収集の及び関連研究図書検討のために図書関連費用を用いる。授業や日常学校生活場面データの記録と整理のためにビデオ関連費用を用いる。データ全般にわたる解析のためにコンピュータ関連費用を用いる。調査に要する質問紙作成やコンピュータ提示材料作成のため、及び研究全体の結果整理のために消耗品費用を用いる。データ記録の管理と得られたデータの整理のために研究補助謝金を用いる。研究成果の検討と発表のために旅費を用いる。
|