本研究は、フランス革命の有した国外への勢力拡張という特徴に、教育・文化の側面から新たな光を投じ、「ライン左岸併合地」におけるフランス革命の伝播と受容について明らかにすることをめざした。革命期に、フランスは革命戦争の中で隣接地を併合し、その外周には姉妹共和国を建てていた。こうした併合地の統治については、史料上の制約によりこれまでほとんど解明されていなかったが、本研究では、「ライン左岸併合地」について、現在の主にベルギー、ドイツとスイスの西部にあたる地域を対象に、現地では散逸していた史料をパリの文書館に見つけ、これを用いて当時施行された法の受容や、フランス側から派遣された人々と併合地の人々との間に生じた関係を教育・文化の側面から解明した。また、フランス側の史料のみではなく、当時の併合地側(ベルギー、ドイツ西部およびスイス)の史料調査・分析を行った。本研究による成果は、フランス国立フランス革命史研究所(ソルボンヌ)とフランス革命博物館(ヴィジル)の主催で、フランス革命から225周年にあたる2014年に行われた「フランス革命史研究国際シンポジウム」(フランス・ヴィジル)で報告することができた。この国際シンポジウムには、イタリアの研究者をはじめヨーロッパ諸地域から研究者が参加しており、本研究の仏語報告も、国際的な革命史研究への貢献として評価していただくことができた。またその結果、この国際シンポジウムでの報告のいくつかを選んで編集されることとなった『フランス革命史年報』に、本研究に基づく論文が掲載されることとなった。フランス本国やヨーロッパの近年の研究においても、併合地におけるフランス革命の伝播と受容の問題は注目されており、本研究の成果をさらに深化させ、学界での議論に重要な新しい視座を提起したいと考えている。
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