研究課題/領域番号 |
23530996
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
今村 光章 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10300120)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 環境教育 / 環境思想 / 教育思想 |
研究概要 |
持続可能社会における自己のあり方について哲学的に考察した。具体的には、アルネ・ネスらのディープ・エコロジーをはじめとする環境思想のなかで、「エコロジカルな自己(ecological self)」の概念を研究し、持続可能社会における人間の自己の有り方(自己形成の方向性)を考察した。この点に関しては、アラン・ドレングソンらが、『ディープ・エコロジー』でも主張する「存在の豊かさ」という概念に加え、フィリップ・シャベコフの「環境主義」、ウルリッヒ・ベックのリスク社会論、ガタリの三つのエコロジーなどを検討し、持続可能社会における自己形成と社会のあり方について、社会哲学的な側面からも研究をおこなった。 同時に、現在もあらゆる分野で模索されている「持続可能性」について、科学教育の立場と教育哲学の立場から、その概念と理念に関する理論的研究をおこなった。 なお、環境教育思想の研究:ジルーやアップルなどの批判的教育学を手がかりに、現代社会の再生産に与していた学校教育の有り方を振り返り、新たな持続可能な社会を構築する教育の思想、および、環境教育思想史について研究し、あらたな教育目的概念を明らかにした。 総じて、持続可能な市民社会を構築する教育思想に関する基礎的研究の土台を形成するために、アメリカの環境教育学者のBOWERSの論文を丁寧に読み、その思想的背景について分析した。また、ドイツの環境教育の研究者である、dE HAANの論文についても検討した。 その結果、ヘルダーリンの詩にある用語で、ハイデッガーもとりあげた、「詩的に大地にすまう。価値に満ちて」という用語で、持続可能な社会のありかたを把握する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初のとおりの研究計画ですすめられている。また、これまでに予定していた文献以外にもさまざまな論文を拝読し、総合的な研究をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに予定していた下記の内容に加えて「詩的に大地にすまう。価値に満ちて」を実践しているような「森のようちえん」活動について研究したい。そのため、日本と韓国、ドイツの「森のようちえん」、および、環境教育の研究をおこないたい。 同時に、並行して、環境思想研究および環境教育思想研究を実際のものにするためにカリキュラム開発をおこないたい。持続可能な社会を構築する次世代の教育システムについて、学校教育と社会教育、および、地域社会やNGO/NPOなどでも行われる環境教育を含め、現実的なカリキュラムの開発を行い、持続可能な社会の実現を達成したい。 具体的には、(1)イギリスの市民性育成の教育の内容について考察するとともに、アンドリュー・ドブソンの環境的市民性(Environmental Citizenship)の育成の教育のありかたを検討する。(2)インドを非暴力で独立に導いたガンジーの思想と、『スモール・イズ・ビューティフル』の著者シューマッハーの思想に基づきイギリスに設立された学び舎、シューマッハー・カレッジとスモール・スクールのカリキュラムを検討する。(3)「持続可能性のための教育」の推進力である環境教育の取り組みであるドイツ"Transfer-21"および、かつての"BLK-Programm"21"の取り組みを視察し、そのカリキュラムやコンテンツを考察する。(4)日本のNGO/NPOで行われる環境教育(環境学習活動)のプログラムを検討したい。とりわけリスクに関するコミュニケーションのあり方について検討し、そのエッセンシャルミニマムを最終年度までに抽出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
すでに予定しているように、文献を含めた物品費に300000円程度、また、旅費として、300000円程度、謝金とその他で、200000円程度を予定している。
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