全国の学校において喫緊の課題である児童生徒同士の交流活性化を目標に、異なる言語・文化・価値観を背景とする子どもたちが共存する「多言語環境」への参画・調査・支援を通して、やりとりの様相を抽出・解析し、対話と学びの関係性・対話的手法の有効性・対話による環境づくりの理論を実証する。この過程を経て、教育現場い自らの力による学習環境づくりを支える主体的カリキュラムを構築し、相互交流と環境良質化の手法を学ぶ新教科「対話」の創設を行う。本研究は、異なりが存在するからこそ当該環境が豊かになり、豊かさを維持するツールとしてことばがあるという「生態学的観点」に依拠したもので、個人的な発達能力と考えられてきたことばの力も環境全体の力であり、個人と環境との相互作用の中でその力が進展するという原理に則り、異なった言語・文化・価値観をもつ構成員が教育活動に貢献するかけがえのない学習機会創出者とみなす。その上で、動的・可変的・主体的方針としてのカリキュラムを構築する。 研究意義は、研究手法の新規開拓、現場自らの率先した改善、教員養成や研修への新しい道筋の提示、教育的資源が乏しい地域に対する貢献、現代的課題群に対する適切な指針の提示、学校を核とする地域社会の活力向上、公教育のあり方への問い直し、多文化共生社会への理解と参画の促進、教育学・心理学・社会学・言語学等関連分野間の有機的関連づけ、というところにある。 最終年度としての本年度は、3年間の研究成果を継承しながら、教育言語学の観点から最先端の教科教育論と実践方法を結びつけた理論を完成させた。その成果公表と周知および実践現場への還元を目的として、インドネシア(バンドン市)にて公開授業を実施した。現職教員をはじめとする関係者との議論を通して、当該理論の有効性を検証することができた。
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