研究課題/領域番号 |
23530998
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉川 卓治 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50230694)
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キーワード | 総力戦体制 / 高等教育機関 / 医育統一 / 前橋医学専門学校 |
研究概要 |
本年度は主として二つの取り組みを行なった。 一つは、総力戦体制下において公立高等教育機関がどうして大増設されたのかということについての再検討である。従来の研究でいわれてきた「軍部主導による戦時国家政策」によるものという捉え方を洗い直すことを目指した。本年度は、文部省および厚生省の政策動向および府県の当局と議会の動向、設置認可申請の過程を押さえるという作業を行なった。その結果、大増設の背景には、総力戦体制下における統制強化のいわば「パラドクス」とでもいうべき状況が生じていたこと、また政府において認可行政の「弛緩」、コントロールの喪失という傾向にあったことが指摘できるのではないかという結論に達した。 この研究成果については、2012年10月20日に横浜市立大学で開催された大学史研究会第35回大学史研究セミナー・シンポジウムにおいてパネリストとして発表する機会が与えられた際に報告した。 もう一つは、官立高等教育機関の設置過程についての資料収集および分析である。具体的には、総力戦体制下において、「医育統一」という従来からの文部省の政策方針にもかかわらず設置された、既設の医学部ないし医科大学に付設された臨時附属医学専門部以外の三つの官立医学専門学校に注目した。そして、そのなかでも初めて設置された官立医学専門学校である前橋医学専門学校について、群馬県公文書館および群馬県立図書館に所蔵されている『群馬県報』『群馬県会会議録』『上毛新聞』などを調査し、関係する部分を複写・収集した。すでに分析に入っているが成果については今後発表される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では高等教育機関の地域間格差の発生メカニズムを探るために、①公立高等教育機関を設置した地域、②官立高等教育機関を誘致した地域、③どちらも設置されなかった地域、④地域間の比較検討という手順を踏む計画をたてている。①については平成23年度から24年度にかけて実施され、24年度に成果の一部を発表した。②については平成24年において着手した。すでに史料収集の第一段は終えた。ただ、その検討の中でさらに地域を追加し、史料の収集が必要ではないかとの考えに達している。したがって、この部分において計画の進行がやや遅滞しているといわざるを得ないが、平成25年度においてその補足と③の作業を同時並行的に進めることが可能であるため上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、昨年度の研究の過程で追加調査が必要と判断された、1940年代に官立高等教育機関を誘致しえた地域についてまず補充調査を行なう。 そして、これと併行して、当初の予定どおり「高等教育機関が設置されなかった地域」について史料収集を実施し、その検討を進めて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、計画どおり設備備品費を支出して高等教育史関連図書を購入する。また、国内での調査に出かけるために旅費を使用する。収集した史料の整理のために謝金等を用い、その他、史料のコピーなどのために複写費を使用する。
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