研究課題
本年度は二回の研究会を行った。具体的には最終年度の総括のための合宿を行い、そして3月に比較教育社会史研究会にて本科研の最終報告を行った。本科研は「児童保護と教育「支援」」、「特別なニーズに対する就学「支援」」、「職業教育「支援」」の三グループに分かれ、研究代表者、分担者6名、協力者4名の11名で研究を行ってきた。その成果は最終報告書にまとめ、広島大学のレポジトリに掲載した。本共同科研では、「国家による「支援」体制の比較」、「科学的な知識・学問領域およびテクノロジーが「支援」に及ぼした影響」、「戦争が「支援」自体や被支援者に対するまなざしに与えた影響」、「被支援者の家族への注目」を共通課題として設定し検討した。常に問題となったのは、個々の「支援」が実際に何を「支援」しえたのか/しようとしたのかという問いであった。最終的に各グループがそれぞれの強調点(家族・就学・就労)に照らしながら、この問いに基づく新しい枠組みを提示した。「児童保護」グループでは、子どもの「養育」主体をめぐって議論された。個別研究で示されたのは、親あるいは子どもの「生き残り」戦略と、それを国家や社会、組織がどのような形で「許すか」という、まさに「命」に関わる問題であった。その意味で生存「支援」という枠組みが出された。「就学支援」グループでは、学校へのアクセスの問題は、教育/学習機会が奪われるというだけではなく、彼らの生き方の可能性を左右するものであった点に着目して、生活「支援」という枠組みが設定された。「職業教育」グループでは、労働者像だけではなく扶養者や良妻賢母など、社会が求めるそれぞれの役割像へとつながるものとして、「労働」に関わってどう生きていくのかを問う生計「支援」という枠組みを示した。これらの枠組みが議論の結果出されたことは一つの成果であるが、しかし本当に妥当な枠組みなのかは今後の課題である。
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史学雑誌
巻: 122-5 ページ: 368-375
比較教育社会史研究会『通信II』
巻: 1 ページ: 1-4
http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00035438