研究課題/領域番号 |
23531011
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山本 珠美 香川大学, 生涯学習教育研究センター, 准教授 (60380200)
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キーワード | 大学拡張 / 大学開放 / 大学巡回講演 / 大学生 / 地域貢献 |
研究概要 |
平成24年度は、研究計画に記載した【萌芽的実践期】(大正~昭和戦前)のうち、⑨学生・卒業生による拡張事業、具体的には大正末期に学生主導で行われた大学巡回講演の実態について研究を進めた。 大学拡張については様々な研究がなされてきたが、「どのような取組があったか」に比べて「それは誰が担当したのか」についてはあまり興味が注がれてこなかったように見受けられる。大学拡張の担い手は誰かと考えると、日本の場合、教職員のみならず学生の力によるところが大きい。学生による巡回講演の取組は各地で数百人~一千人規模の集客力を誇った事業であった。その一方で、先行研究として『東洋大学百年史通史編I』が「大学主催」と「学生主催」に分けて論じているものもないわけではないが、研究計画にも記載したとおり、大学拡張の歴史研究においては、教員主体の取組に研究対象が限定されてきた傾向がある。 日本では大正8年の大学令によって大学の数が増えたにもかかわらず、大学生は「エリート」として社会の指導階級足らねばならぬという自負を持っていた。彼らは日本全国で巡回公演を実施し、法律に、経済に、外交問題に、熱弁をふるった。今年度は、特に、神戸高等商業学校、大阪高等商業学校、関西大学、大阪医科大学といった関西圏の学生たちの取組について、新聞や学友会誌をもとに検討した。また、大学巡回講演を受け入れた地方の視点を明らかにするため、香川県下で開催された大学巡回講演の実態について『香川新報』の記事を分析した。 これら大学巡回講演は、大学生による地域貢献に注目が集まる現在への示唆に富むものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では平成24年度までは戦前歴史研究、平成25年度以降に戦後の展開分析としていたが、実際にはこれまで戦前の歴史研究を主として行いつつも、現代的な課題もいくつか論文としてまとめている。戦前歴史研究についてはまだ未着手の部分が残されているものの、その遅れ分は既に始めている戦後の分析によって十分補われるため、研究はおおむね順調に進展していると言って良いと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
先の項目にも記載したとおり、当初の研究計画では平成24年度までは戦前歴史研究、平成25年度以降に戦後の展開分析としていたが、実際にはこれまで戦前の歴史研究を主として行いつつも、現代的な課題もいくつか論文としてまとめている。そのため、平成25年度においても戦前歴史研究で残った部分(大学巡回講演の嚆矢である早稲田大学の取組、等)についてはこれまで同様継続しつつ、戦後大学開放の展開については計画通りに進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
中間報告書の作成に関し、2012年度末に執筆した論文を含めたく、主に同報告書作成用として当該研究費を繰り越した。
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