研究課題/領域番号 |
23531014
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
梶原 郁郎 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30390016)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | デューイ / 教育課程 / 認識形成 / 仕事と科学 |
研究概要 |
本研究の目的はデューイの教育課程論と民主主義社会論との関係究明を前に、デューイの教育課程を、(1)科学的認識形成を含む環境制御能力形成論として、(2)行為に連動可能な社会認識形成論として、(3)他者形成の段階的過程として分析することである。デューイの教育課程を認識形成の水準において明らかにする点に、これまでのデューイの教育課程研究に対する本研究の意義があり、またその水準で研究してこそデューイの教育課程論を現代の教育課程に継承できるという点に、本研究の重要性がある。 本年度は次の成果を得た。(1)論文「J.デューイの教育哲学における個人と世界の一元論―事物認識形成と他者認識形成両論上の意味―」(2011年10月)、(2)論文「『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)の社会認識形成論― 視座転換を可能とする他者認識の段階的形成の筋道―」(2011年10月)、(3)学会発表「J.デューイにおける熟慮 reflection 概念の道徳教育論上の機能-認識と行為-」(2011年10月)。論文(1)は、デューイの環境制御能力の知的側面である認識形成論の構造を、その根底にある哲学に着目して、明らかにした。論文(2)は、デューイの教育学を基底としているとされる『君たちはどう生きるか』を、認識形成における視座転換の問題に着目して分析して、行為に連動可能な社会認識形成の在り方を明らかにした。同じく認識と行為との関係を課題として学会発表(3)では、熟慮による社会認識形成が行為への連動可能であるということを明示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はデューイの教育課程論と民主主義社会論との関係究明を前に、デューイの教育課程を、(1)科学的認識形成を含む環境制御能力形成論として、(2)行為に連動可能な社会認識形成論として、(3)他者形成の段階的過程として分析することである。この課題(1)に関しては、論文「J.デューイの教育哲学における個人と世界の一元論―事物認識形成と他者認識形成両論上の意味―」において、デューイの環境制御能力の知的側面である認識形成の問題を検討して、デューイの認識形成の構造と意味を明らかにすることができた。課題(2)については、論文「『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)の社会認識形成論― 視座転換を可能とする他者認識の段階的形成の筋道―」と、学会発表「J.デューイにおける熟慮 reflection 概念の道徳教育論上の機能-認識と行為-」とにおいて、行為に連動可能な社会認識形成論の構造と特徴とを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的はデューイの教育課程論と民主主義社会論との関係究明を前に、デューイの教育課程を、(1)科学的認識形成を含む環境制御能力形成論として、(2)行為に連動可能な社会認識形成論として、(3)他者形成の段階的過程として分析することである。この課題の検討を、本年度の成果に続けてさらに次のように進めていきたい。第一に、本研究の教育課程研究として意義と重要性とを示すために、デューイの教育課程研究および教育課程研究一般において、認識形成の水準で教育課程を研究するという方法が採られておらず、したがってデューイ研究においてはデューイの教育課程論と民主主義社会論との関係が認識形成論の次元で解明されていないという点を明示したい。第二に、デューイの教育課程を分析する分析者側の条件を、デューイの一元論哲学の中から導き出して、デューイの教育課程研究の基礎条件を明示したい。これは、本研究の上記三つの課題に取り組むための前提条件を明示する作業である。その前提条件を踏まえて第三に、デューイの環境制御能力形成論については、その身体形成の側面に焦点を当てて検討を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上の今後の課題を推進していくために、次年度の研究費の使用を次のように計画している。(1)図書等物品費130千円、(2)旅費260千円、(3)人件費・謝金10千円、(4)文献複写等その他100千円。旅費は学会発表(東京)と資料収集とに使用する。論文の検討会も兼ねて資料収集は、デューイ全集をはじめデューイ関連の文献も豊富に所蔵されている東北大学図書館で行う。論文の検討会では原稿を発表して、申請者の大学院時代から指導いただいている教員から指導を受け、有益な知見収集に努める。この他に必要な図書・資料については適宜複写依頼等で収集して、本研究の課題に取り組む。
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