本研究は以下の課題に取り組み、デューイの教育課程論を認識形成論として明らかにする。デューイの教育課程論を、(I)科学的認識形成を含む環境制御能力形成論として、(II)行為に連動可能な社会認識形成論として、(III)他者形成の段階的過程として分析する。平成25年度の研究成果は以下の通りである。 交付申請書に25年度の課題として記載した(III)に取り組むには、教育課程を教育過程として分析する基礎条件を検討する必要がある。前年度の学会発表を検討し直し、「教育過程分析の基礎条件-内容と方法に関するJ.デューイの二元論を踏まえて-」の論文を纏めた。 また次の学会発表を行った。(1)「自然科学系教科による道徳教育の内容と方法-J.デューイの道徳教育論を踏まえて-」、(2)「地域の素材を活かした総合的学習の実践事例-J.デューイの仕事学習との関連-」、(3)「算数教育と道徳教育との内的関係に関する事例研究-算数の知識および算数観に関する学生アンケート調査を踏まえて-」。上記課題(II)を自然認識形成の場合で問うた(1)では、行為に連動可能な自然認識形成の要件となる他者の視点形成の在り方を、デューイ他者の視点形成(他者形成)論とは異なるものとして提示した。この課題に、新たな調査資料を用いて(3)で取り組み、算数教育と道徳教育との関係に関するデューイの見解を踏まえて、算数教育による道徳教育の内容・方法を提示した。(2)では、上記課題(I)のデューイにおける科学的認識形成を、仕事 occupations から科学の教育課程を教育過程として分析する中で捉えて、その分析結果を踏まえて、仕事から理科(科学)への教育過程を内容レベルで構想した。この発表では、課題(I)の環境制御能力の問題までは検討できなかったが、以上の三つの発表では、課題(I)(II)(III)以外の新たな課題にも取り組み、その成果を学会で報告した。
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