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2012 年度 実施状況報告書

高等学校定時制・通信制課程の社会史研究-戦後日本の青年の生き方に関する一考察-

研究課題

研究課題/領域番号 23531020
研究機関作新学院大学

研究代表者

小林 千枝子  作新学院大学, 人間文化学部, 教授 (10170333)

キーワード定時制課程 / 通信制課程 / 中等教育 / 戦後日本 / 青年 / 自立 / 生き方 / 職業選択
研究概要

平成24年度には、前年度に学会発表した「定時制高校からのメッセージ―教育目標・評価論の社会的課題を探る―」を深めて論文としてまとめた。研究フィールドとした地域の一つである栃木県について、小山市立中央図書館にて資料調査を行った。小山市の場合、戦前・戦後の中等教育の流れについて、ほとんど未研究の状態であることがわかった。申請者自身、戦時中に間々田実業学校があったことを母親から聞いているが、それを含めて、戦前・戦後の各学校の存続と変遷の実態等の研究がかなりたち遅れている。現代では小山市で指折りの小規模校になっている網戸小学校と下生井小学校に連続する新制中学校として生井中学校が、戦後初期に新設されたことが文献で確認できた。本研究は、高校の定時制・通信制課程を研究対象とするが、どういう人たちが定時制・通信制課程に入学したのかという問題を検討するには、戦後はじめて設置が義務化された中学校の設立状況とその後の盛衰を明らかにすることも必要である。そうしたことが改めて確認された。
栃木県については、まずは学校の設置や変遷課程を明らかにすることが必要になってくる。その第一歩として、現在の高等学校のホームページを通して、学校史等を調べることをした。また、申請者が勤務する大学にも定時制課程や通信制課程を卒業して入学してきている学生が少数ではあれ存在する。そうした学生の聞き書き調査を行い、定時制・通信制課程の現状を把握する作業も行った。
到達度評価研究の歴史的課題を整理するにあたって、「全定一元化」(全日制課程と定時制とは教育内容や教員等種々の面で同一基準で運営するという戦後初期に存在した原則)に言及することもできた。申請者が長年研究フィールドにしてきた京都府・奥丹後の一女性の生き方を探る過程で、新制高等学校の小学区制開始の現状を具体的に把握し、記述することもできた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

勤務先の大学の事情により新しく担当する講義があり、講義ノートづくり等に意外に時間を取られたこと。
栃木県の戦後教育史研究がかなりたち遅れており、収集した文献を読む作業で精いっぱいであったこと。
愛知県の昼間二交代定時制高校の卒業生の聞き書き調査をしようと計画したが、調査日程をうまく組めなかったこと。
これまでの奥丹後の到達度評価実践の研究がまとめ切れておらず、その作業に重点が置かれがちであった。ただし、奥丹後のことでも、また到達度評価実践の研究でも、申請者の関心が青年の生き方にあるという点では共通しており、定時制・通信制の直接かかわらない表題を持つ論考でも、結果的にだが、青年の生き方や中等教育の在り方に言及することができた。

今後の研究の推進方策

未研究の部分が多い栃木県の動向を中心に調査研究する計画である。栃木県の高等学校定時制・通信制の動向を明らかにすることは、栃木県の中等教育の戦後史を明らかにすることを伴う。新制中学校が地域社会にどのように受け止められ、卒業生はどのような進路をとったのか。定時制高校への進学が一定の需要をもっていたのではないかと推測されるが、データで裏付けることが必要である。
そこで、聞き書き調査をできる限り行うようにしたい。聞き書き調査については、申請者にとって最も身近な地域である旧生井村に焦点を当てるようにしたい。その理由は、つてをたどって聞き書き調査をできる可能性が高いからである。その過程で文献の発掘があることを期待したい。戦後、義務制の新制中学校の生井中学校が旧生井村の中央部に設置され、昭和30年代の市町村合併により生井村の村名がなくなるまで存続した。現代では過疎の傾向のある地域だが、生井中学校の設立は戦後初期の生井村の隆盛を思わせる。戦後初期に新制中学校に入学した世代が、現在70代後半になっている。この世代の方々の聞き書き調査が急がれる。
愛知県の昼間二交代定時制については、研究が少なく、データを収集しておかないと忘れられてしまう恐れもある。申請者の以前の調査活動により卒業生と連絡を取る手だてがあるので、聞き書き調査を進めたい。栃木県にも昼間二交代定時制の高校が存在したとの記録もあるので、どの地域のどの高校に存在したのかも、明らかにしたい。

次年度の研究費の使用計画

栃木県内の調査活動は、電車を利用することもあるが、自家用車が利用多くなると思う二で、旅費は少なくて済む。そのため、愛知県に行くことや学会での研究成果発表も含めて、旅費は30万円とする。できるだけ多くの方々の聞き書き調査をしたいので、謝礼は多めに7万円とする。他は、書籍、資料の複写費や、自家用車のガソリン代、バス・タクシー代、印刷用紙、プリンタのカートリッジ、文具等々を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 定時制高校からのメッセージ―教育目標・評価論の社会的課題を探る―2013

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      作大論集

      巻: 第3号 ページ: 123-153

  • [雑誌論文] 到達度評価の実践的可能性を探る―原点としての生活綴り方が意味するもの―2013

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      教科外活動と到達度評価

      巻: 第14号 ページ: 36-50

  • [雑誌論文] 奥丹後の地域教育運動をめぐる人物群像(5)―文化活動を陰で支えた下戸松子の苦悩と文化づくり―2013

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      教科外活動と到達度評価

      巻: 第14号 ページ: 51-62

  • [雑誌論文] 到達度評価は授業づくりにとどまらない―到達度評価=生活綴方の嫡子論が意味するもの―2013

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      今日からはじめる楽しい授業づくり

      巻: 第2号 ページ: 未定

  • [学会発表] 到達度評価の原点を探る―到達度評価は授業づくりにとどまらない―2012

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 学会等名
      教育目標・評価学会
    • 発表場所
      東洋大学
    • 年月日
      20121110-20121111

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公開日: 2014-07-24  

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