研究課題/領域番号 |
23531020
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研究機関 | 作新学院大学 |
研究代表者 |
小林 千枝子 作新学院大学, 人間文化学部, 教授 (10170333)
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キーワード | 定時制課程 / 通信制課程 / 戦後日本 / 新制中学校 / 新制高等学校 / 青年 / 自立 / 職業選択 |
研究概要 |
研究フィールドの一つとした栃木県については、戦後日本の小中学校および高等学校の設置・廃校・新設の動向についてのまとまった記録や研究書がなく、とりあえず、高等学校や中学校の「記念誌」等を公立図書館や個人を通していくつか収集した。その過程で、定る時制・通信制課程に進学する生徒たちの前歴を形成した新制中学校の研究が不可欠であることが確認できた。そして、先行研究がない状況下では、聞き書き調査を行いながら事実を積み上げていくことが必要であることが痛感された。 栃木県南部に位置する小山市には、戦後初期に2町8村のすべてに町立あるいは村立の新制中学校が設置された。しかし、うち2村の中学校はわずか11年で廃校となった。その背後に1950~60年代の市町村合併と工業化推進があった。廃校となった中学校の一つ、生井村立生井中学校については「昭和三十二年改 学校沿革誌」を入手することができた。生井中学校の校区にある2小学校の4~6年児童にアンケート調査を行った。これらの資料やデータ、小山市の各方面の戦後史研究、さらに教え子の聞き書きをもとに、『生井地区 地域教材 旧生井村にみる戦後日本のはじまり―栃木県下都賀郡生井村立生井中学校の成立と展開―』と題する冊子を作成した。この冊子は児童向け教材として作成し、アンケート調査協力の礼として前記2小学校や生井公民館等に差し上げた。生井中学校その周辺の動きについて学会発表もした。これらの調査・研究を通して、戦後初期に、栃木農業高等学校定時制課程の分校が現小山市の農村部の小学校に存在したこと、農業を中心とした産業教育が地域ぐるみで行われていたこと等もわかった。 生井中学校の元教師の聞き書きを行ったことを契機として小山歴史研究会に参加しはじめた。同会には元教師が多数おり、聞き書き調査の準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
栃木県の教育史研究が立ち遅れており、収集資料の整理や分析に時間を取られた。 本研究と一部重なる研究で、15年にわたった京都府奥丹後の戦後日本の地域と教育に焦点を当てた教育社会史研究について出版する計画を進めたため、原稿の一部修正などの作業に思わぬ時間を取られた。 本研究の一環として小山歴史研究会や小山古文書愛好会に参加するようになった。これらの会は小山市の元教師たちが中心になって活動していることから、小山市に限らず栃木県の戦後教育について資料提供を受けたり、小中学校や高等学校の動向について、折りに触れ話をしてくれるので、大変助かっているのだが、研究に直接反映させるまでにはまだ至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、京都府と愛知県と栃木県を研究フィールドとしている。平成25年度は、栃木県のことに終始してしまった。比較研究のために、京都府や愛知県の動向にも、再度目を向けていくようにしたい。とくに愛知県の昼間二交代定時制については、研究を深め得る教師側の動向を伝える資料を入手しており、聞き書き調査を進めるようにしたい。 栃木県の動向については、まとまった先行研究はないが、元教師たちの聞き書き調査を行う手がかりが身近なところからたくさんできてきているので、できるだけ時間を作って研究を進めたい。 定時制・通信制課程研究に、戦後初期の中学校に存在していた民主社会形成に向けての教育可能性との関連を見出す視点を深めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回研究フィールドとした小山市が申請者の居住地であったため、旅費がごく少額しかかからなかった。また、小山歴史研究会や小山古文書愛好会を通して資料を入手する機会に恵まれたが、これまた、金銭面の支出はなかった。冊子を作成したが、印刷・製本のすべてを申請者の手作りで仕上げたので、少額の出費で済んだ。 必要な書籍の購入を考えたが、予算内に収まるかどうかの不安があったので、次年度に回した。 少し高額な必要書籍の購入。栃木県における定時制・通信制の研究が不十分なので、それに最も力を入れて調査研究を行いたい。資料整理等は、アルバイトを頼むことを考えたい。京都府や愛知県の調査も進めるようにする。 地域教材等の冊子作成に際しては、印刷業者に依頼して、しっかりしたものを作るようにする。
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