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2014 年度 実施状況報告書

高等学校定時制・通信制課程の社会史研究-戦後日本の青年の生き方に関する一考察-

研究課題

研究課題/領域番号 23531020
研究機関作新学院大学

研究代表者

小林 千枝子  作新学院大学, 人間文化学部, 教授 (10170333)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2016-03-31
キーワード新制中学校 / 定時制 / 通信制 / 青年 / 進路指導 / 自立 / 地域住民 / 教育評価
研究実績の概要

平成26年度には、栃木県小山市に焦点を当てて調査研究を行った。その最初の契機は、高等学校定時制・通信制課程に入学してくる生徒たちは新制中学校の卒業生たちであることから、新制中学校は定時制・通信制課程の前史に相当すると判断したことによる。また、定時制・通信制は戦後の新学制で設置されたものであり、新制中学校とセットでとらえるのが妥当であろう。現在の中学校は高等学校への通過機関のように位置づいており、そのことの青少年への影響は計り知れないほど大きい。
小山市に限って事例研究を進めたところ、戦後初期の新制中学校は各市町村に設置され、施設設備の不十分さにもかかわらず、教師も生徒たちも、さらに地域住民も中学校は地域の産業や生活を豊かにするものととらえて、大きな期待を寄せていた。ところが、1950年代後半から市町村合併とともに中学校の統廃合がはじまり、地域社会の中学校という側面が急速に薄れていったようにみえる。中学校の性格の転換期は、高等学校定時制課程の生徒数減少期と重なる。このことから、この時期を境に青少年の生き方が大きく変化したことが推定される。本研究は、大きくは戦後日本の大衆青年の生き方を描くことを課題としていることから、新制中学校まで視野に入れた点は重要であった。しかし、肝心の定時制・通信制課程の研究が遅れたことは否めない。なお、小山市の新制中学校研究の過程で、戦前に教師教育を受けて戦後教師として生きてきた元教師の聞き書きを進めることができた。制度的な変遷を見るだけでは把握できない教師や子どもたちの様子がうかがえて、ナラティブ・ドキュメントとして、こうした調査を続けていこうと考えている。
その他、戦後日本の教育評価史についても研究を進めることができ、聞き書き調査に際してその知見を生かすことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

栃木県の動向に目を向けたところ、戦後の教育史研究がほとんど進められておらず、各高等学校の変遷過程を確認することから、はじまった。そうした研究状況は、これまで研究フィールドにしてきた京都府とまったく異なる。しかし、栃木県のこの研究事情は決して珍しいものではないだろう。とにかく一つひとつ研究を積み重ねて活字にしていくことが大切である。栃木県小山市の新制中学校に目を向けたところ、資料の保存状況も良好とはいえず、聞き書きが重要な資料収集の方法となることが確認された。
研究が遅れた理由の一つに、平成26年度中に、日本学術振興会の出版助成を受けて『戦後日本の地域と教育―京都府奥単語における教育実践の社会史―』を学術出版会から刊行し、その際の校正作業や表紙や挿絵決定などでの出版社とのやり取りに思わぬ時間を取られたこともある。

今後の研究の推進方策

平成27年度は本研究助成の最終年度である。京都府、愛知県、栃木県の3府県を研究フィールドとすることを計画したが、無謀であった。これといった先行研究がない中での研究は、栃木県の小山市だけでも数年はかかかるとみなければならない。そう考えるのは、高等学校だけでなく新制中学校も視野に入れたことによる。
平成27年度は研究報告書を作成してこれまでの研究成果を整理してまとめることが大きな課題となる。中間報告的なものにならざるを得ないが、これまでの研究成果を踏まえて、それなりにまとまったものを作成したい。愛知県については、ある昼間二交代定時制高校の生徒会が編集・発行した文集の詳細な抜き書きを作成してあるので、それを整理して研究報告書に「資料」として組み入れたい。
申請者のこれからの研究として地元である栃木県を研究フィールドとすることを展望しているので、栃木県については新制中学校や高等学校定時制・通信制課程を含む戦後教育史にかかわる研究をとくに深めたい。

次年度使用額が生じた理由

申請者が居住する地域の調査研究しかできず、京都府や愛知県など遠方への調査ができず、旅費をあまり使わなかったことによる。なお、遠方への調査旅行に出かけられなかったのは、第一には私的事情からあまり家をあけられなかったためである。

次年度使用額の使用計画

遠方への調査研究を手がけたい。愛知県については、聞き書き調査が中途で終わっているので、ぜひ続行したい。平成26年度中にはあった遠方へ出かけられない私的事情は解決してきているので、京都府や愛知県の調査に出かける計画である。また、必要書籍を積極的に入手する計画である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 習熟論再考2014

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      教科外活動と到達度評価

      巻: 第15号 ページ: 2~13

  • [雑誌論文] 日本における社会史研究ことはじめ―中内敏夫著『心性史家アリエスとの出会い―』に寄せて2014

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      教科外活動と到達度評価

      巻: 第15号 ページ: 62~66

  • [雑誌論文] 新制中学校における共同体的慣行と近代的価値―栃木県下都賀郡生井村立生井中学校の成立と展開―2014

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      作大論集

      巻: 第5号 ページ: 431~452

  • [雑誌論文] 書評 田中耕治著『教育評価と教育実践の課題―「評価の時代」を拓く―』2014

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 雑誌名

      教育目標・評価学会紀要

      巻: 第24号 ページ: 95~97

  • [学会発表] 教育評価再考―豊かな子ども、教師、学校へ―2014

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子・平岡さつき
    • 学会等名
      教育目標・評価学会第25回大会
    • 発表場所
      群馬大学教育学部
    • 年月日
      2014-11-29
    • 招待講演
  • [図書] 戦後日本の地域と教育―京都府奥丹後における教育実践の社会史―2014

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子
    • 総ページ数
      432
    • 出版者
      学術出版会
  • [図書] 教育評価再考―豊かな子ども、教師、学校へ―2014

    • 著者名/発表者名
      小林千枝子・平岡さつき
    • 総ページ数
      172
    • 出版者
      松井ピ・テ・オ印刷

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公開日: 2016-05-27  

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