研究課題/領域番号 |
23531021
|
研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
太田 和男 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 教授 (40269428)
|
研究分担者 |
那須 幸雄 文教大学, 国際学部, 教授 (40208070)
千葉 隆一 文京学院短期大学, 英語キャリア科, 教授 (70461803)
|
キーワード | 観光インターンシップ / ホテルインターンシップ / ホスピタリティ・マネジメント / 長期インターンシップ / 海外インターンシップ |
研究概要 |
研究目標を達成するため、分析を行い、暫定的に5つの仮説を得た。その5仮説について、アンケート調査、インタビュー調査などのフィールドワークを推進し、先行研究の分析と統合して研究を深化させてきた。研究を進展させモデルを提示する準備は整いつつある。 第1の仮説は、高等教育機関における一般ビジネス体験型インターンシップに比べ、観光系学部・学科すなわちホスピタリティ・マネジメント・コースのそれは、専門性、スキルの取得、適性確認のために、長期であることを強く求められているという点である。第2の仮説は、米英独の観光インターンシップは必修科目、長期、かつ比較的マネジメント実習重視となっており、実習を経験した学生の就職直結率が高いのに対し、わが国の場合には低い。その理由は観光企業が、実習生を一部安価な労働力供給源として認識し、採用と切り離す傾向が強いことである。第3の仮説は、わが国の観光インターンシップは、他のビジネス・インターンシップと同様に、米国からの形態の導入を最優先したため、キャリア開発との関連が比較的稀薄であるということである。第4の仮説は、専門の即戦力育成をめざし、観光インターンシップをその重要段階と位置づける米国に対し、わが国観光系学部・学科は社会的アピール手段としてとらえ、そのキャリア開発効果をあまり重視してこなかったということである。第5の仮説は、わが国観光業界を巡る環境が、外資系巨大ホテルチェーンの本邦進出やインバウンド観光客の増加などグローバル化しつつある中で、観光企業もグローバル型人材の増強を迫られている。このため、わが国観光企業のインターンシップに対する認識がグローバル志向にシフトしつつあり、採用面で体験学習重視の兆候が現れていることである。 これら5つの仮説については、先行研究、アンケート調査、インタビューによりおおむね立証されつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.平成24年度においては、平成23年度の調査研究を受けて研究を促進するために、さらにアンケート調査を拡充強化し、先行研究による分析、知見の統合による研究を深化させた。また、その成果の外部発表にも一段と努力した。その結果は、平成24年度までの計画目的をおおむね達成するものであったと自己評価できる。 2.平成23年度に米国のホスピタリティ・マネジメント専攻の大学生や米国の観光学科を有するコーネル大学、セントラルフロリダ大学、ヒューストン大学を訪問し、また、独逸、英国を訪問し学生へのインタビュー及びアンケート調査を実施した。平成24年度にはハワイ大学トラベル・インダストリー学部、同大学マノア・キャリア・センターを訪問し、インタビューを実施した。 3.アンケート調査については平成23年度に日本のホテル100件、米国ホテル100件を対象に実施した。さらに平成24年度には日本のホテル200件、米国ホテル169件、独逸のホテル5件、独逸の5つの大学などに対し調査票を発送した。このように平成24年度の発送数合計379件は、当初計画である内外観光機関向け合計200件を大きく上回っている。これは、平成23年度アンケート調査の回収率が低かったのに対応し、研究精度を高めるため、アンケート調査票の回収数を増やそうとして講じた施策の一環である。平成23年度における観光系学生などへのアンケートやインタビューは米国36件、独逸8件、英国2件であり、その成果は、立証予定の仮説をおおむね裏付けるものであった。 4.平成24年度には、特に研究成果の外部発表において顕著な進展があった。すなわち平成23年度の外部発表は、紀要1件であったが、平成24年度においては紀要2件への掲載、日本インターンシップ学会関東支部第3回研究会での発表、さらに日本インターンシップ学会第13回大会での発表を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、半構造化面接の実施や、アンケート調査の実施と回収、統計処理を実施し、これまでの研究成果のホームページによる公開、学会発表、紀要への寄稿をさらに進め、インターンシップモデルを提示する予定である。その際、一般ビジネス型インターンシップとの対比に留意しつつ、調査、研究を進める。 米英独の大学観光系学部、英独日のホテル、さらには、面会可能な調査対象地域の航空会社、旅行社などにインタビュー調査またはアンケート調査を実施する。それを通じて、観光インターンシップが、一般の就業体験型に比べ、その専門性や、実習期間、グローバル性などの面で、観光業に従事することを目指してのキャリア形成上、優位に立つことを一層綿密に調査、研究し裏付ける。アンケート調査の回収率向上のため、アンケート調査対象の一部について、可能な範囲内で、電話や訪問によるインタビューを併用し、実質的なアンケート回収率向上とインタビュー調査の充実を図る。 修正版グラウンデッド・セオリーアプローチについては平成24年度にその実施手法を研究開始しており、その成果をインタビューに応用し、研究成果をさらに深化させる。 一般的な体験型インターンシップに比べて、特に国をこえて行う国際型観光インターンシップがキャリア形成に有効であることを先行研究などからも解明し、キャリア育成効果の高い観光インターンシップモデルを構築する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.キャリア形成上、観光インターンシップは一般体験型に比べ、専門性、長期性、グローバル性という特質を有する場合、特に有効であるとする仮設を、米国、英国、独逸、日本のホテルや旅行業者、旅行会社、大学の観光系学部・学科・キャリアセンター、観光系学生などに対して、予算や協力度などから可能な範囲でインタビュー調査を実施し、検証する。このための旅費、謝金を可能な限り節約しつつ最大の効果を上げるよう効率的に使用する。 2.引き続き内外のホテル、旅行会社などにアンケート調査票100通前後を発送し、その回収結果について、平成23年度・平成24年度回収分と合わせて統計処理するための費用に充当する。 3.半構造化面接を実施し、修正版グラウンデッド・セオリーアプローチによる検証をするための謝金や旅費などに使用する。 4.ホームページを作成し、研究成果を公表するために効果的に使用する。
|