研究課題/領域番号 |
23531027
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
高橋 陽一 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (70299957)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 国学 / 教科書 / 伝統文化 / 歴史 / 道徳 / 万国博覧会 / アメリカ |
研究概要 |
平成23年度(初年度)においては、学問分野・教科を縦軸、国学者を横軸として先行研究状況、史料の存在状況を明らかに計画に従って、対象とする国学者である小中村清矩、榊原芳野、佐藤誠実、木村正辞らの著作物、文部省、教部省、内務省など関係文書の調査を行った。教科書については、1872(明治5)年以後の文部省編纂の3つの初等歴史教科書(木村正辞・那珂通高・内田正雄『史略』、大槻文彦『万国史略』、木村正辞『日本史略』)について、成立の背景や万国博覧会出展品の日本史紹介書との異同などを検討した。 本研究の遂行に当たっては計画に従って研究会を組織して構想や研究内容を報告して各分野の専門家の知見をもとめた。研究会には、伊東毅(武蔵野美術大学)、駒込武(京都大学)、竹内久顕(東京女子大学)、田口和人(桐生大学)、小幡啓靖(社団法人実践倫理宏正会)、小川智瑞恵(東京大学史史料室)田中千賀子(武蔵野美術大学造形研究センター・リサーチフェロー)、、齋藤知明(大正大学大学院)、小澤啓(武蔵野美術大学造形研究センター・リサーチフェロー)の9名が参加し、田中千賀子が研究協力者として資料整理等を補助した。 本研究の成果を明示したものとしては、高橋陽一『新版道徳教育講義』武蔵野美術大学出版局、2012年3月では、新版改定にあたって「第七章 伝統文化と愛国心・郷土愛」などを盛り込んだ。また2011年11月20日、日本道徳教育学会第78回大会では、貝塚茂樹・行安茂・高橋陽一・岩田文昭によるシンポジウム「『生命に>対する畏敬の念』をどう育てるか」で「「畏敬の念」と「宗教的情操」のあいだ」を報告して伝統文化研究の視点からの現代の道徳教育への提言とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
資料の所在調査、可能な複写や書籍購入、研究の構想および成果点検のための研究会の実施などは予定通り進捗した。万国博覧会資料などの海外の資料調査は、今年度は効率等の観点から見合わせて、国内からの収集を先行して実施した。 研究成果発表は初年度では予定していなかったが、学会や教科書改訂などで本研究の成果であることを明示して発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた結果を踏まえて、黒川真頼、漢学系の大槻修二、大槻文彦、那珂通高などの少なくとも合計8名の人物にも対象を拡大する。また、大学等の学問形成と初等教科書をつなぐ中等教育教科書、万国博覧会日本紹介冊子などにも注目する。対象としては明治期の中学校や高等女学校の修身や国文の教科書のほか、佐藤誠実『日本教育史』などの師範学校教科書、さらに佐藤誠実や黒川真頼が教員を務めた東京音楽学校・東京美術学校における美術教員・音楽教員養成での影響にも注目する。また、初年度に主として対象とした学問分野(法学、歴史学、国語国文学、芸術学)に加えて、明治期の国学が近世と大きな変容を遂げる神道学説の理解方法や国民教育の焦点となる国体論など倫理宗教学説や修身科教科書との関連に焦点を広げる。万国博覧会に関する資料は国内調査で収集不可能な資料の海外調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
書籍購入と文献複写、使用するPCの更新、研究発表等を中心に研究費を効率的に使用する。海外資料の調査については十分な国内での事前調査に基づいて実施の時期を検討する。
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