第4年度となる2014(平成26)年度は、4年間の研究をまとめるとともに、今後の研究の展開を展望して、明治期の近代国学が過去のものとなった時期である大正期以後に、学問研究や教科書編纂に与えた影響を検討する視点へと移行した。すでに小中村清矩の歌舞音楽研究が昭和期の芸術学にも影響を与えていることを日本諸学振興委員会に即して高橋陽一「芸術学会」(奈須恵子・駒込毅・川村肇編『戦時下学問の統制と動員』2011年、東京大学出版会)において論じたが、さらに法学、歴史学、国語国文学の領域でも検証を行う計画ですすめた。この点において、昭和戦前期の各分野にわたる学問論としての「日本精神論」への注目ができたことが最大の成果であった。 研究の遂行に当たっては計画通りに昨年度より研究会を組織して、大学での研究会又は資料回覧等により各分野の専門家の知見を求めた。研究会には、伊東毅(武蔵野美術大学)、駒込武(京都大学)、竹内久顕(東京女子大学)、田口和人(桐生大学)、小幡啓靖(社団法人実践倫理宏正会)、小川智瑞恵(東京大学史史料室)、田中千賀子(武蔵野美術大学非常勤講師)、小澤啓(武蔵野美術大学造形研究センター・リサーチフェロー)、斎藤知明(大正大学非常勤講師)の9名が参加し、田中千賀子が研究協力者として資料整理などを補助した。 本年度の成果としては、高橋陽一「建学の精神をめぐる学問と宗教と国家―近代教育史のなかの大谷大学」大谷大学真宗総合研究所『研究紀要』第32号、2015年3月(2014年12月4日査読済)を発表した。また、書評として、「小笠原道雄・田中毎実・森田尚人・矢野智司著『日本教育学の系譜―吉田熊次・篠原助市・長田新・森昭』」日本教育学会『教育学研究』第82巻第2号(2015年6月刊行・受理済)を執筆した。
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