研究課題/領域番号 |
23531032
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
田中 卓也 吉備国際大学, 心理学部, 講師 (90435040)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 近代 / 少年雑誌 / 読者共同体 / 子ども文化 / 教育史 / 日本 / 読者意識 / 読者投稿欄 |
研究概要 |
本研究課題「近代日本における少年雑誌の普及と読者共同体の成立過程に関する研究は、近代日本における読者の組織化と読者共同体の成立の実態に関する史的研究の一部をなすものである。本研究では3年間において、以下の3点の事項について明らかにしたいと考える。(1)明治期から昭和戦前期までに発刊された少年雑誌が現存されているものすべてについて考察し、特徴を明らかにする。なかでも当時の少年らに人気のあった少年雑誌(『少年世界』・『少年界』など)を取り上げ、各雑誌の特徴についても明確にしたい。また明治期から昭和戦前期の各時代における児童雑誌の特徴についても分析を試みたいと考える。(2)少年読者の年齢層およびその特徴を明らかにする。(3)また想像上の「読者共同体」の形成過程を考察し、その性格・特徴についても見いだしたい。 平成23年度の計画としては、わが国の近代以降に発刊された雑誌(現存するもの)の雑誌数およびその雑誌の名称、各雑誌の発行部数、発刊の動機や成立(発刊)時期・特徴などについて分析・考察を試みることで、各雑誌の性格・特徴を明らかになるよう試みた。またその際には、近代少年雑誌に関する先行研究についても悉皆調査し、まとめることについても行った。また各少年雑誌における「表紙」や「掲載広告」などについても、できるだけ調査することで、その雑誌の求めていた理想の「少年像」をとらえることできると考えた。そのため現存している多くの少年雑誌を収集した後、閲覧しながら考察・検討についても行った。これらの具体的方策として、(1)に基本文献の整備を行った。(2)に資料の悉皆収集と整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に研究を進められている。しかしながら大きく2つの課題を残すことになった。 (1)多くの少年雑誌を収集し、読者投稿欄を中心に分析・考察を進めなければならなかったが、東北地方を襲った大震災の影響に伴い、多くの資料調査計画に基づいた旅行を中止せざるを得ない状況になった。また各関連の図書館などにおける計画停電の実施にともない、資料調査時間も短縮せざるを得ないものとなった。そのため少年雑誌も数誌に限られることになり、計画通りの研究には至らなかった。 (2)投稿欄を分析・考察するなかで、読者共同体の特徴を見いださなければならなかったが、雑誌によっては読者投稿欄が充実していない、もしくは設けられていないものが存在したりしたため、雑誌によっては十分な考察・検討に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、近代少年雑誌に関する先行研究およびその成立時期や特徴を明らかにしたえうで、雑誌の投稿者(おもに少年読者)についての分析・考察を行う。その際には各雑誌の「投稿欄」(投書欄・投稿記事)についても明らかにしようと考えている。なお、先行研究(たとえば前田愛・成田龍一・岡谷英明ら)の著書や論文では、おもに明治期を対象にしたものであるため、先行研究でこれまで取り上げられることのなかった『少年界』・『小学少年』・『小学生の友』などの他雑誌を取り扱い、投書欄の分析・考察を進めたうえで、特徴の比較・考察を試みる。また時代が下るが、大正期~昭和戦前期における読者の分析を行うことで、各時代ごとに読者の特徴に間っする比較・考察も可能となるため、さらに研究を進めていくこととなる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度において物品費については、400,000円程度、旅費については300,000程度、人件費・謝金については50,000円程度、その他費用としては350,000円程度を現在見込んでいる。いずれにせよ、今後の研究に有効なものとなるよう活用したい。
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