研究課題/領域番号 |
23531032
|
研究機関 | 共栄大学 |
研究代表者 |
田中 卓也 共栄大学, 教育学部, 准教授 (90435040)
|
キーワード | 近代 / 少年雑誌 / 読者共同体 / 子ども文化 / 教育史 / 日本 / 読者意識 / 読者投稿欄 |
研究概要 |
本研究課題である「近代日本における少年雑誌の普及と少年読者意識形成に関する歴史的研究」は近代日本における児童雑誌における読者の組織化と読者共同体の成立に関する研究の一部をなすものであり、本研究では3年間において、①明治期から昭和戦前期までに発刊された少年読者を現存しているものの考察を試み、その特徴を明らかにする。②明治~昭和戦前期の各時代における児童雑誌の特徴についても明らかにする。なぜ、その雑誌を読むことになったのかについての動機・理由などについても可能な限り迫る。③また想像上の「読者共同体」の形成過程を考察し、その特徴について明らかにする。以上の3点を達成目標としている。当該年度については、おおむね近代少年雑誌に関する先行研究およびその成立・特徴について明らかにしている。 1点目は各少年雑誌において、読者共同体が成立しているもの、そうでないものが明確に分かれていて、読者共同体が存在しない雑誌は比較的短命であることがわかった。 2点目は戦前期に刊行された少年雑誌の読者等は、誌上で仲間を見つけ、文通などの交際や勉学などに切磋琢磨した。投書欄では、美文などの文章の巧拙を競ったり、互いに投稿作品を批評し合うなど、お互いライバル同士としての読者仲間であったように見受けられる。戦前から戦後にかけて継続した雑誌も多く存在したが、すでに読者共同体が崩壊し、読者個人と記者(編者)との関係を結ぶ傾向になっていた。また共同体のイデオロギー性についてもそれほど感じさせないものであった。しかしながら少年雑誌を保存する関連の図書館などにおける少年雑誌の保存状況が一部でよくなかったり、雑誌は存在するが、まったく保存されていない場合などもあり、研究上での考察・検討において困難を来すことも生じた。また『少年雑誌』が大変多いこともあって、全部の雑誌に目を通すことができない状況にあることが問題点である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度についての研究は、おおむね近代少年雑誌に関する先行研究および成立・特徴について明らかにしたうえで、雑誌の投稿者(少年読者)についての分析・考察を行うことに努めた。また「読者共同体」の成立意義や特徴についても明らかにしようと試み、おおむね考察・分析も進められた。しかしながら当該関連図書館などにおける少年雑誌の保存状況も一部悪かったり、記載内容がみあたらなかったりするなど、雑誌の資料状況もさまざまであり、やや困難を極めたことも否めない。また大正期から昭和戦前期における読者の分析を行うことのできなかった雑誌も数点存在するので、本年度に進めていきたいと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
大正期から昭和戦前期における読者の分析を行うことのできなかった雑誌も数点存在するので、次年度において、調査研究はもちろんのこと、分析・考察など積極的に進めていきたいと考える。また、戦後の少年雑誌などにも、もう少し視野を広げながら、戦前から戦後にかけての雑誌読者の様相の変化や特徴について見いだすことにも努めていきたいと考える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は研究の最終年にたるので、これまでの2年間の研究でできなかったところについて、調査研究を行い、研究成果を学会発表・論文執筆などに努めたいと考える。また最終年ということもあり、これまでの研究成果を報告書として作成することにも努めたい。なお、物品費については、300,000円程度、旅費については200,000円程度、人件費・謝金については50,000円程度、その他費用として150,000円程度を現在見込んでいる。この費用には、「研究成果報告書」の作成費用にあてることになる。 いずれにせよ、今後の研究に有効活用するようにしたいと考える。
|