研究課題/領域番号 |
23531034
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研究機関 | 北陸学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
辻 直人 北陸学院大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70523679)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 海外留学 / 日米交流 / 日独交流 |
研究概要 |
日本から海外留学した学生に関する史料調査を行った。国内においては慶應義塾大学、早稲田大学を中心に、海外においてはアメリカの南カリフォルニア大学、スタンフォード大学、シカゴ大学を訪問し史料調査を実施した。また、外務省外交史料館や国会図書館においても関連ある史料、文献の閲覧をした。いずれの大学でも、特に現地に行かなければ見られず、今までの研究でも余り注目されてこなかった史料を閲覧することができた。特にアメリカでは、今後も継続して調査を進めるための人的つながりも作ることができ、とても大きな成果のあった調査となった。 慶應義塾は明治32年、私学では最初に海外留学生を制度として確立した学校だが、その派遣実態は明らかにされていなかった。調査の結果、評議員会記録などにたびたび留学生派遣に関する件が取り上げられていることが分かった。明治44年以降の記録について現段階で一般公開されていなかったが、その代わりに『慶應義塾学報』という雑誌に義塾派遣留学生たちの動向も書かれていることも分かった。私学では慶應義塾に継ぐ早い段階から留学生派遣制度を確立した早稲田大学には、『〔出版年自明治33年至昭和14年〕早稲田大学留学生名簿 留学生証明書公附原簿』などの簿冊が保管されていた。この史料は、誰を何処に派遣するのか、大学(学長)によっていつその派遣が決議されたのかを知ることができ、留学生派遣の実態を解明するのに役立つ内容で貴重なものと言える。アメリカでは、いずれの大学にも日本人留学生たちが発行していた日本語雑誌が保管されており、留学当時の日本人学生の様子が記録されていた。その他、スタンフォード大学には留学生の日記や日本人教員市橋倭の日記や講義記録などが、シカゴ大学でも日本人教員戸田謙二に関する書類が残っており、彼らがアメリカでどのような生活をしていたのか垣間見る史料と出会えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、史料収集は順調に進んでいる。予想以上に慶應義塾での調査に時間がかかっている。これは、考えていたよりも多く見るべき史料があったためで、嬉しい誤算である。慶應での調査を終えることができなかったが、慶應と早稲田での調査に取り掛かることができた点は計画通りである。 また、海外調査を1回実施する計画も、アメリカに渡り3か所の大学で調査を実施できた。計画段階では2か所訪問する予定だったが、南カリフォルニア大学の研究者とコンタクトを取ることができ、渡米前から研究協力してもらえることになったので、予定外だった同大学でも調査することができた。また、南カリフォルニア大学で調査したことがきっかけで、同大学図書館員からシカゴ大学の図書館員も紹介してもらえた。シカゴ大学は最初から訪問する計画だったが、研究協力してもらえる人物を直接紹介してもらえたので、シカゴに行ってからも予想以上に今回の調査に関する情報を得ることができた。また、シカゴ大学にしてもスタンフォード大学にしても、現地でなければ見られない史料を見ることができ、また同大学の史料保管状況も知ることができたので、大きな収穫だった。現地のスタッフも資料閲覧に関しては様々に融通をきかせてくれ、多くの所蔵史料を直接閲覧することができた。 史料収集に関しては順調に進んでいる一方で、集まった史料の分析についてはまだ不十分と言える。次年度は史料の分析とその結果をまとめる作業にも取り組んでいきたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においても、引き続き国内外の史料調査を継続する。慶應義塾での調査がもう少し残っているので、早い段階で見るべき史料の閲覧を終えたい。その後収集した史料の分析結果をもとに、改めて同大学福沢研究センターなどに更なる史料調査の協力をあおぎたい。海外については、前回はアメリカ西海岸を中心に調査したので、今度は東海岸を中心に回り、更にもう一度可能であればドイツかアメリカでの調査を実行したいと考えている。ドイツに関しては調査を進めるにあたって既に情報を集めており、調査協力をお願いできそうな人物にも声をかけ始めているので、行けるタイミングを見計らって計画していきたい。アメリカ、ドイツの他、更に調査協力をあおげる予定のフランスについても、具体的に訪問先を絞り、先方や調査協力者とも連絡を取りつつ、準備を進めたい。 集まった史料を用いて内容を分析し、データベースや論文としてまとめる作業を進める。また、足りない史料、もっと調査すべき点が見つかった場合は、改めて関係諸機関に問い合わせることにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においても、国内外の史料調査収集のための旅費を中心に研究費を使用したい。大体1回の海外調査で30万は必要となる。今回はできれば2回の海外調査、具体的にはアメリカとドイツ、あるいはアメリカに2回出張したいと考える。その他、東京を中心に国内の調査活動を実施する。調査の中間報告を行うため、学会ないし研究会において報告もしたいと考えており、そのための旅費にも使用したい。 集めた史料を整理するためのファイル、撮影した電子データ管理のためのCD-Rなど記憶媒体も充実させ、不慮の出来事で消失することのないように備えたい。
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