研究課題/領域番号 |
23531038
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
田端 健人 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (50344742)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教育実践 / 問題行動 / 表現活動 / 現象学 / 解釈学 / 質的研究 |
研究概要 |
本年度は、当該研究の研究方法となる現象学的/解釈学的アプローチの特質と意義について、考察を進めた。教育実践現場を研究する有効な方法として、現象学的/解釈学的アプローチを質的研究の一つと位置づけ、他の質的研究法との対比によって、その特徴や強みや意義を導出した。その成果は口頭発表や論文にて公表した。 問題行動に関する先行研究や文献を、収集・検討した。 問題行動に直面している学校現場の観察については、2011年3月11日の東日本大震災とその後の学校現場の非常事態のため、当初の計画通りには進めることはできなかった。 しかし、インタビューと協力者の参与的観察により、幾つかの観察調査の結果、研究上有意義な事例を記録することができた。これは、前年度までいわゆる「学級崩壊」の状態にあった学級を、新年度新たな担任教師が立て直した事例である。そこには、先行研究では着目されていない教師の繊細で発想豊かな働きかけが多く見られ、極めて示唆的であった。この事例でも、当初の研究計画で想定した通り、子どもの表現活動が変化の鍵となったが、この事例では、表現活動を積極的に取り入れるというよりも、子どもの自発的で問題的な表現活動を教師が、学級の子どもたちにとっては意外な仕方で、そして一般常識からしても意外な仕方で解釈し、応答する点に特徴があった。この事例に関しては、既に論文としてまとめており、平成24年度中に発表を計画している。 なお、研究成果は、学会発表や学術論文に加え、当初の計画通り、大学学部教育や教職大学院教育や教員免許状更新講習などを通して、教員を志望する学生と現職教員にフィードバックした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究方法に関する理論的考察を前進させることができた。問題行動を克服する実践事例を、しかも極めて示唆的な事例を収集できた。教育現場の観察が当初予定していたほどにはできなかった。先行研究に関する検討も計画通りの進展であった。学会や研究会等を通して、関連する研究者(教育研究者や現象学研究者)との有意義な交流と情報交換ができた。発表に関しても、学会での口頭発表や雑誌論文、学生や現場教師へのフィードバック等、おおむね計画通り実施した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)子どもの問題行動を克服していく教育実践事例を収集する。観察やインタビューを行うが、前年度の成果からインタビューが一定の有効性をもち、なにより効率的であることから、インタビューを当初計画以上に活用する。アンケート調査についても、当該研究上有効であるかどうかを吟味する。(2)これまでに収集した事例をもとに、先行研究と照らし合わせながら、問題行動克服の本質について、表現活動に着目しつつ、理論的に考察する。成果は、随時発表していく。(3)(2)と並行して、実践現場研究法としての現象学的/解釈学的アプローチの強みや意義や独創性について、従来の質的研究方法や、哲学としての現象学との対比において、一層明確化する。(4)本テーマに関する研究のさらなる展開を模索する。哲学研究者、心理学研究者、質的研究者等との連携も模索する。(5)学会や学術雑誌への発表に加え、教員志望学生や現職教員へのフィードバックを積極的に行い、社会貢献に寄与する。その一環として、問題行動に取り組む学校現場との共同研究も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)関連する文献の購入費(2)インタビューや観察のための研究旅費(3)研究協力者や研究補助者への謝金(4)研究会等のための会場費(5)研究協力者との打ち合わせのための通信費(6)学会や研究会参加のための旅費(7)老朽化した機器の買い替え費用 など
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