1.研究会の開催:研究代表者と研究分担者がそれぞれ担当領域について検討を進めるとともに、本年度も代表者と分担者で研究会を開催し、公文書資料等の分析結果の検討、米国調査の事前の検討と調査結果の分析、学会発表に向けての準備などを行った。 2.米国調査:カリフォルニア州にあるカーネギー教育振興財団、SRIインターナショナル研究所、WestEd研究所、カリフォルニア大学バークレー校などを訪れ、連邦教育政策に携わった人や連邦教育政策の研究者にインタビュー調査を行うとともに関連資料を収集した。 3.研究成果の発表:以上の研究活動により、 (1)平等保障のための連邦政府の積極的な役割を求める民主党リベラル派とそれを批判し市場や個人の自由を重視する共和党保守派の対立のなかで、1990年代のクリントン政権は「第三の道」を指向し、その初期教育政策におけるNPM型ガバナンス改革はモデレートなものになったこと、(2)クリントン政権期の教育政策にはリベラリズムの平等保障の政策理念とコミュニタリアン的なコミュニティの再建と共有する価値の教育という政策理念が交差し、学力保障とともに人格教育の推進が政策に組み込まれたこと、(3) NPM型のガバナンス改革においては、教育の平等保障が主目的に据えられた場合、実施者や実施機関の自律性はその手段的な位置づけとなり、ブッシュ政権期に成立した「どの子も置き去りにしない法」(NCLB法)では厳しいアカウンタビリティ・システムが採用されるに至ったこと、(4)NCLB法は連邦政府の権限拡大に反対した二大政党の保守派以外の様々な勢力の妥協策であり、貧困層やマイノリティの生徒の学力向上と格差是正をめざす公民権擁護団体の推進もあって成立したことなどを明らかにし、関連学会の大会や紀要で発表した。
|