研究課題/領域番号 |
23531046
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
前原 健二 東京学芸大学, 教員養成カリキュラム開発研究センター, 准教授 (40222286)
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キーワード | 教員研修 / 校内研修 / ドイツの教育 / 分権化 / 学校と大学の連携 |
研究概要 |
平成24年度は研究計画・方法に記した内容のうち、ドイツを対象とした現地調査(2回目)を予定通り実施した。中国を対象とした現地調査は実施できなかった。このことについての基本的理由は国際情勢の悪化により、調査のアレンジを依頼することが難しくなったことである。 ドイツを対象とした現地調査については、前年度に実施した調査の結果及びその後の文献研究によって得られた知見を踏まえ、ニーダーザクセン州の新しい教員研修システムの具体的内容を理解することを目的として実施した。文献研究及び現地調査によって今年度明らかになった内容とその意義を2点示す。 第一に、「分権化」を旗印として実施された現職教員研修の大学への移管、州の現職教員研修システムの大幅な縮小は、それを受任した大学の状況によって多彩な運用実態を生んでいる。大学における教員養成教育と組織的に結合を諮りつつ現職教員研修も提供しようとする大学、他の分野の社会人教育と組織的に結合をはかりつつ現職教員研修を提供しようとする大学、アカデミックな観点からの学校・教員支援を主眼とする大学、の三類型が暫定的に区別できると思われる。これらは日本における大学と現職教員研修の関係を構想する上で大いに参考になる。 第二に、教員研修プログラムの内容についてみると、教員個々人の能力開発を目的とした、いわゆる講座型のメニューの提供のほかに、教育活動の単位としての学校自体の能力開発を目的とした、校内研修支援型のメニューも提供されている大学がある。これは1990年代以降、ニーダーザクセン州で進められてきた政策の延長上にあるものとみられる。教員の仕事の「個業性」がきわめて強いドイツの風土の中で、校内研修支援型の研修プログラムがどのように機能しているか、興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究代表者の人的ネットワークを活用して、急速に改革を進めているドイツの教員研修改革を主に、中国の教員研修改革に関する調査を従に、構想されている。昨年来の急激な国際情勢の悪化により、中国の教育行政関係者、学校関係者に対する調査の企画が難しくなっているため、その部分は縮小した。(第一年次には中国において教育行政関係者、校長へのインタビューを実施している。)主たる研究対象であるドイツの状況については、予想以上に情報の収集と分析を進めている。以上の理由により、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は本研究課題の第3年次、最終年度に当たる。実証的な新しい教員研修の仕組みについての分析・整理を進め、理論的な教員研修のフレームワークを提案する作業を進める。 実証的には、ドイツにおける教員研修の「分権化」、大学と学校の連携に関わる調査研究から得られる知見を整理する。 理論的には、現職教員研修は単に教員に新しい情報を提供することで完結するものではなく、教員の養成と採用、組織としての学校の改善を含む多元的なプロジェクトであり、大学と教育行政との新しい関係形成も含んで、それぞれに理論的フレームワークを構築しつつ展開されていることを説明するべく分析を進める。 日本における教育センター等の教員研修プログラムについての情報収集は継続的に進め、年度末にかけて、組織体としての学校の改善開発と教員研修、リソースとしての大学の関わりについての理論モデルをまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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