平成25年度は教員研修の動向についての分析・整理を進め、理論的な教員 研修のフレームワークを提案する作業を進めた。 日本については、教員研修を主に供給する教育センター等の活動について大きな再編の動きはみられないと言ってよい。実践的にみた場合、教員研修の企画・運営を担当する職員の移動のペースが速く、経験の蓄積やプログラムの熟成ないし更新が必ずしも意図的に図られていないことが指摘できる。このことは、新しい課題、例えば10年経験者研修と免許更新講習の調整、初任者研修の長期化などにおいて、県ごとの差異を生む原因ともなりうる。ドイツにおいては、一部の州が教育行政による教員研修の供給をやめ、大学へ移管しているが、こうした動きは理論的には教員を対象とした研修の提供を縮小し、教育行政は「学校改善への支援」に注力する方向と解釈できる。本「大学への移管」はその一つの方法で、同様の意図を「研修の市場化」で果たそうとする動きもありうる。 企業社会一般を対象とした組織改善ないし職能成長の理論の分析を通じて、「個人の組織への統合」を前提とするタイプのものと「個人の組織からの独立性」を重視するタイプのものがあるようを見出した。それらは必ずしも単純に年代論で整理できないように思われた。この二つを教員研修に関するフレームワークとして位置づければ、日本の教員研修体制は「個人の組織からの独立性」を前提としつつ学校改善は別の位相に位置づけるもので、ドイツのそれは「個人の組織への統合」を進める中で研修と学校改善の一体化を図ろうとするものとみることができる。なおこの点については平成26年度から新規の科研費研究課題として発展的に研究を進める予定である。平成25年度中は前年度に続き短期で中国を訪問、研究者との若干の協議を進めたが、期間全体を通して当初想定した情報を集めることができなかった。この点は反省したい。
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