研究課題/領域番号 |
23531048
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
降旗 信一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00452946)
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研究分担者 |
朝岡 幸彦 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60201886)
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キーワード | 生物多様性 / リジリアンス / 災害教育 / 環境教育 / ESD |
研究概要 |
本研究は、教育の法制改革と振興計画の重要な分野である幼児・児童期の発達課題としての自然体験学習と生物多様性保全認識の向上を、自然科学視点に加えて社会・経済・文化的視点も含めた食育の視点(身体レベルのコミュニケーション能力の回復や農業や食のあり方の見直しの視点)でとらえることにより、持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable development=ESD)としての積極的な学社融合カリキュラム開発の究明を目的とした。 本研究においては以下の3点を個別目標として射程においた。(1) 今日的学習課題である生物多様性の保全認識向上を食育の視点(身 体レベルのコミュニケーション能力の回復や農業や食のあり方の見直しの視点)をもったカリキュラムを開発する。(2) 各教科指導の中で実施される観点別評価に相当する「環境・生物多様性教育」の評価指標を作成するとともに、学社融合カリキュラムの進め方における課題を明らかにする。(3) SLE研究のこれまでの成果を踏まえて、「環境に働きかける実践力の育成」のための教育方法を開発し、日本の成果を踏まえて世界・特に東アジア各国との共同調査の実施・検討を行う。 研究二年目の24年度は前年度の基礎調査データと設計した調査票に基づき、生物多様性や食に関連する教科・領域における体系的・総合的な学習カリキュラム、地域教育の学習課題と方法についての調査を行った。具体的には、「A.生物多様性教育カリキュラムの開発RP」、「B.環境・生物多様性教育の評価指標作成RP」、「C.世界・特に東アジア各国との共同調査の実施・検討RP」、「D.環境に働きかける実践力の育成のための教育方法の開発RP」、「E.学社融合カリキュラムの進め方における課題RP」の5つのリサーチプロジェクトをスタートさせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3点の個別目標について以下のサブプロジェクトが進行している。 「(1) 今日的学習課題である生物多様性の保全認識向上を食育の視点(身体レベルのコミュニケーション能力の回復や農業や食のあり方の見直しの視点)をもったカリキュラムを開発する個別目標」については、A-1.教師教育のための農地活用SRP(Sub Reseach Project)、A-2.自然保護教育・自然体験学習SRP、A-3.環境思想・教育SRP、E-1.学校と地域の連携(長野県飯田市調査)SRP、「E-2.高等学校「総合学科」に関する研究SRP」、「E-3.学校支援地域本部における学生ボランティア受け入れに関する研究SRP」を開始し、その成果の一部を公表した。 「(2) 各教科指導の中で実施される観点別評価に相当する「環境・生物多様性教育」の評価指標を作成するとともに、学社融合カリキュラムの進め方における課題を明らかにする個別目標」については、「B-1.教科「環境」(案)の授業評価指標開発SRP」「C-1.韓国農村の教育共同体研究SRP」「C-2.ESDと生物多様性SRP」、「D-2.環境教育における人格及び発達論の研究SRP」「D-3.公民館における防災教育拠点としての諸課題に関する研究SRP」を開始し、その成果の一部を公表した。 「(3) SLE研究のこれまでの成果を踏まえて、「環境に働きかける実践力の育成」のための教育方法を開発し、日本の成果を踏まえて世界・特に東アジア各国との共同調査の実施・検討を行う個別目標」については、」、「D-1.コミュニティリジリアンス(宮城県南三陸町調査)」SRP、「D-4.自治体及びNPOの職員研修に関する研究」、「D-5.環境教育における参加型アクションリサーチ研究」を開始し、その成果の一部を公表した。 以上の状況から研究目的の達成度はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の申請後に新たに生まれた東日本大震災という状況を踏まえ、本研究では、「自然体験学習と生物多様性保全認識の向上を、自然科学視点に加えて社会・経済・文化的視点も含める」という本研究の目的を、リジリアンス研究として発展させていく方向性を探っている。3.11以降、被災地域の復興をめぐる議論の中で、震災以前からこれらの地域の多くが抱えていた過疎、貧困、里山、村落共同体の崩壊といった課題を解決し、自然災害のリスクと向き合いながら、地域がより持続可能に復興していくかのという議論が、さまざまな場・主体によってなされている。環境、社会、経済的、心理学的、都市設計など、多様な研究者、行政、NGO、一般市民が、さまざまな領域、角度から議論を重ねている。こうした無数の議論の中で、キーワードとして浮上してきたのが「リジリアンス」である。リジリアンス研究は、複雑適応系である社会-生態システムの変化を理解することを中心課題として発展し、現在では多岐にわたる分野で進展がみられている。そこで今後の研究の推進方策として東日本大震災・福島原発事故を教訓として、日本でも予測できない事態への対応能力を高めるためのリジリアンス研究のさらなる進展につなげていく。最終年度の本年度は、Y. エンゲストロームの拡張学習理論を発展させつつ、災害被災地と将来の災害が予想されている地域との相互インタラクティブ学習の可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
各調査地において補足調査を行いつつ研究・調査の精度向上と再構成に取り組むとともに日本型生物多様性教育実践モデルを抽出し、世界環境教育学会などの国際カンファレンスを通して発信する。
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