本研究は、欧州における大学教員の教育職としてのプロフェッショナル化の過程に着目し大学教育のプロフェッショナル認定の仕組みと機能を明らかにすることを目的として実施された。 2013年度は同仕組みについて、計画のとおりオランダとドイツにおける海外調査を中心に行った。オランダでは2008年に全14大学の合意を得て「基礎教授資格(Basic Teaching Qualification)」の教育プログラム修了をもって、全ての新任教員が教育能力証明を行っている。そのプログラムは全体で200時間前後の学習について修了証明を授与する専門職能開発プログラムである。教育能力の証明方法にはポートフォリオ提出の選択肢もある。 ドイツでは州ごとに状況が異なるが、今回調査したベルリン及びザクセン=アンハルト州では、各大学で一定のモジュールの大学教授法の修了証明を出す専門職能開発プログラムを開発しており、大学間の教育開発ネットワーク内で専門職能開発として独自のプログラム認証を試行しつつある。現在は殆どの大学で同教育プログラムへの参加や教育能力証明は自主的に行われているが、近年教授個人の専門職能開発による学習歴を含む教育業績評価や教育プログラムの評価の双方から教育評価を行う大学も増えており、若手のキャリア形成支援としても機能している。 日本でも昨今、教育資格の観点から新任教員研修を中心に教育研修への関心が高まっている。しかしながら本研究成果から、問題は資格の有無、教育研修の義務に留まらないこと、大学教育のプロフェッショナルの認定という自律的な仕組みにより、大学が自らの教育力の保証を行うことであり、学部等がその構成員の能力向上やキャリアの支援を行うことによりその集団の質を高めることであり、教員には部局構成員としての責務を果たしつつ自らのキャリアを開発するという意味があり機能しつつあることが明らかになった。
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