【研究の目的】国立大学法人保健学研究科に地域貢献拠点として設立された「GSH(性差保健)研究実践センター」(センター)が、「研究を基盤とする地域貢献事業」を展開する現行の過程を、事業担当者(申請者)らが内在的・継続的に省察し、役割と意義、課題を導き出すことである。地域や組織のニーズをくみ取りながら、状況に応じて事業展開するプロセスや、関係者(大学教員、専門職、住民等)の健康支援やジェンダーに関わる意識変容は、定点の数値では表明しきれず、長期的・質的・相互的・構造的にとらえていく必要がある。本研究では、省察的実践論・組織学習論をふまえながら、実践と省察のサイクルを通して、「地方国立大学による地域貢献」及び「性差に配慮した健康支援」の実践・研究について実践的な知を生成していく。【実施状況】最終年度においては、関係教員への聞き取り調査、連携研究者との共同省察を実施した。また、センター主催で国際シンポジウムを開催し、申請者もセンターの事業展開と意義について報告し、参加者からのフィードバックを得た。【研究成果】研究目的として設定した3つの観点から地域貢献事業の意義と課題を抽出した結果は、以下となる。①大学教員が性差保健を軸にした地域貢献事業に参画することにより、住民ニーズ、研究・教育活動をとらえ直し、専門職集団へ働きかけを行う等、大学の研究・実践にも還元される成果が見出せた、②関係機関が蓄積する実践的知識の集約が事業展開に寄与する、③「研究データに基づく説明」「男性の健康問題へのアプローチ」が男女共同参画に寄与する要件となる。
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