研究課題/領域番号 |
23531052
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
北田 佳子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60574415)
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キーワード | 学校経営 / 校長のリーダーシップ / 校内研修 / 授業研究 / 教師の職能発達 |
研究概要 |
本研究は、①「校内授業研究に関する校長の意識調査」、②「校内授業研究における校長の役割に関する実態調査」、③「校内授業研究を支える学校文化の発展過程に関する調査」という三つの調査を柱としており、本年度までに②と③の調査を概ね予定通り終了した。具体的には、校内授業研究を学校経営の中核に据えた先駆的な実践を推進している学校長がこれまでに改革を行ってきた三つの学校(静岡県富士市立元吉原中学校、同市立田子浦中学校、同市立富士中学校)における校内授業研究会のDVD記録を分析し、当該校長が明確なヴィジョンを持ちながらも、各学校の実態に応じてリーダーシップの発揮の仕方を変化させ、教職員が同僚とともに学び合う学校文化を形成していくことに大きく寄与していることを明らかにした。校長のリーダーシップに関する先行研究を概観すると、一つの勤務校において校長がどのようにリーダーシップを発揮しているかという研究は存在するものの、ある校長が歴任した複数校を対象に追跡調査を行った研究はほとんど見あたらず、その意味で、本研究の示す知見は重要な意味を持つものと考える。 さらに、本年度は、各学校の教師たちの専門的力量が、当該校長の推進する校内授業研究を通していかに変容していったかということについても探究を行った。特に、近年、団塊世代の教師の大量退職により問題化してきている若手教員の育成という点に焦点化し、若手教員が校内授業研究において成長していく過程を分析し、その成長に果たした校長の役割を明らかにした。そして、これらの研究の成果を、日本教育方法学会第49回大会、ならびにThe 1st International Conference for the School as Learning Communityのシンポジウムにおいて発表し(いずれも招待講演)、国内外の研究者や実践者と本研究で得られた知見を共有するとともに、他国や他地域における現状に関する情報交換や意見交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、①平成23年度に「校内授業研究に関する校長の意識調査」、②平成24年度に「校内授業研究における校長の役割に関する実態調査」、③平成25年度に「校内授業研究を支える学校文化の発展過程に関する調査」を行う予定であった。しかし、①として予定していた調査対象県に東日本大震災で被災した福島と岩手が含まれていたため、当面これを延期することとし、②と③に予定していた研究を全体的に前倒しにする形で研究を進め、本年度は、②と③の調査を概ね終えることができた。しかしながら、①として予定していた調査は、被災地の現状を鑑み、当初の調査対象県を変更する形で実施することとし、その調査を進めているところであるが、この変更にともなう緒手続き等に当初の計画以上の時間が必要となったため、本研究の期間を来年度末まで延長申請し、①の調査の完了と研究の総括を来年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、平成23年度に予定していた「校内授業研究に関する校長の意識調査」では、「全国学力・学習状況調査」における校内授業研究の実施回数の多い県・少ない県という基準に基づいて選定した対象県のなかに、東日本大震災で被災した福島と岩手が含まれていたが、被災地の現状を考え、調査の対象県を変更し実施することとする。具体的には、(a)本研究代表者が10年以上にわたり校内授業研究会の協力者として関わっている静岡県、(b)5年程度関わっている富山県、(c)関わり初めたばかりの兵庫県(兵庫県については他県に変更する可能性あり)を対象とし、「校内授業研究に関する校長の意識調査」を実施する予定である。そして、最終的にこれまでの調査結果を総括し、校内授業研究における教師の職能発達を支援する校長のリーダーシップについて、実践・理論の二つの側面から明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に予定していた「校内授業研究に関する校長の意識調査」の調査対象県である福島と岩手が、研究計画時には想定していなかった東日本大震災で被災しため、当面この調査を延期しながら状況を見守っていたが、現在もなお震災の影響が残存している状況を鑑み、平成25年度から、当初の調査対象県を変更する形で、現在新たな調査を進めており、その継続調査と分析を来年度も引き続き実施するため、未使用額が生じた。 調査対象県を変更した「校内授業研究に関する校長の意識調査」の実施に伴う諸経費と、これまでの全調査を最終的に総括した報告書の発行に使用する予定である。
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