研究課題/領域番号 |
23531059
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
松浦 善満 和歌山大学, 教育学部, 教授 (40243365)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教師バーンアウト / 教職モティベーション「国際情報交流」 / 精神疾患 / 学校改革 / 学校文化 |
研究概要 |
本研究では日本の教師の疲弊状況は新たな深刻な段階に入ったとの認識に立ち、教師バーンアウト研究の理論的見なおしと、有効性のある対応策の提言を目的にしており、実施計画に基ずく研究成果は以下のとおりである。1・教師バーアウトの先行研究を遂行した。とくに精神科医中島一憲「先生が壊れてゆく」(弘文堂)をテキストに9名の研究協力者により、中島のケーススタディーを検討した。その結果、精神疾患であるうつ病の罹患者が教員に多く見られるのは、ただ単に多忙化だけでなく、多忙化の中で教師自身が自己の実践の効力を振り返ることができなくなっていることが明らかになった。自己省察により「やりがいの再構成」がおこなわれることにより教師は精神的疲労から解放されるのである。効力感を得る仕組みの構築が学校職場の同僚関係にあるとの指摘が従来からなされているが、このように同僚性の水準の高い学校の抽出作業が24年度の課題になる。2・教師バーンアウトの克服プログラムの策定に当たっては、従来からのバーンアウト尺度による調査と対照的に教職モチベーションの高い教師ならびに学校の持つ特質を調査し、そこにおけるファクターをいくつか抽出することが有効であるとの視点から、海外日本人学校における教員・学校調査を実施した。 協力者の西川信廣(京都産業大学)氏と、シンガポール日本人学校の教員と管理職への聞き取り調査を実施した。この研究から、在外日本人学校という海外への職業地点の移動を行う教員の教職モティベーションには高いものがあることが判明した。かれらのモチベーションのコアには個人主義的側面と同時に、新たな課題に挑戦し教職のばーっくボーンである「教員挑戦力」が内在していることが明らかになった。3・関西教育学会に指導力不足教員の回復過程について研究協力者とともに発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1・先行研究をほぼ実施できた。2・研究仮説の策定を行った。準仮説としての教師バーンアウトの従来型尺度から、教職モティベーション尺度の必要性(逆仮説)の設定を行うことができた。3・さらに教職モティベーションの高い教師への聞き取り調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
教師バーンアウト研究は従来からは、うつ病をはじめとする精神疾患の罹患率、あるいはA・Mパインズらの心理学的尺度を使ったアンケート調査によるデータ分析に終始していたが、今回の研究から、量的データにかかわらず質的データによる研究分析が必要であることがほぼ確認された。 今後は紙媒体調査と並行して典型学校を抽出して定点観察による質的データの取得と分析による研究を展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度研究から、第1に教職モティベーションの高い学校を小学校・中学校で各3校程度設定する。第2に教職モティベーションと教師の多忙化、教育困難、自律性などとの相関性について、アンケート調査、並びに聞き取り調査を実施する。 教職モティベーションの高い学校での定点観察体制を確立する。なお23年度には国内調査、とりわけ和歌山県南部地域、東京都での調査研究が風水害等で、相手側との合同会議が持つことができず24年度に持ち越さざるを得なかったので、この分も含めて24年度計画を実施する。
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