研究課題/領域番号 |
23531060
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林 孝 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30144786)
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キーワード | 学校評価システム / 特色ある開かれた学校 / 職員室文化 |
研究概要 |
「職員室文化」の発掘と継承の対象とする「特色ある開かれた学校づくり」に関わって、広島県内の公立小・中学校を対象に、校長・教頭・教務主任・研究主任・教職員に対する質問紙調査を実施した。その結果、「特色ある開かれた学校づくり」に資する「職員室文化」の核として、校内授業研究会の存在が指摘できた。その運営については、それぞれの学校で様々な工夫が行われ、取組の形態も多様であり、その学校で勤務した教職員が創意工夫するなかで、地域や児童の実態など、学校の置かれている条件の中で、その学校で長い間取り組んできた教育内容や指導方法が存在していることを明らかにした。また、その学校の取組や指導内容を明確にして「特色ある開かれた学校づくり」を行うことで、子どもと価値を共有し組織として取り組み関係機関とも連携して取り組もうとしていることも明らかにした。この結果については、速報として調査協力校にフィードバックし、今後精緻な検討を予定している。これらと関連して、学校という「場」を再考するとともに、学校のパートナーとして地域の存在を整理できた。 学校評価との関連では、第一にA町の4小学校・2中学校の自己評価・学校関係者評価を踏まえて第三者評価の視点で聞き取り調査を実施できた。その結果、長年それぞれの学校で価値あるものとして大切にされてきた教育技術や思考・行動様式の総体である「職員室文化」を反映する学校評価表の作成の重要性を指摘することができるとともに、意見交換のなかで、目標として価値をおくべき「職員室文化」とその目標達成に具体的に取組む方策としての「職員室文化」の存在を明確にすることができた。 第二に、B市のC小学校の学校評価をめぐって、当該校長と教務主任と協働して、平成24年度を点検し25年度の学校評価表を作成した。その結果、25年度の研究実施の事例校として共同研究を進めることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度においても、広島大学附属東雲小学校・東雲中学校2校の校長を併任しており、大学の教育活動に係るエフォートは縮小できたものの、校長職の遂行に力を入れることが必要となった。そのため、研究2年目での実施計画遂行のためのエフォートの遂行に困難を抱えたことも一因である。 研究計画を変更して、初年度予定の他府県の学校評価システムの調査を踏まえた「学校評価システム施策調査」「教職員力量向上施策調査」の実施をあきらめ、教職員間の協働推進に係る施策や教職員の力量向上施策に関する情報をめぐって得られた「特色ある開かれた学校づくり」の視点と家庭・学校・地域社会の教育連携の視点から、一町の4小学校・2中学校の学校評価(自己評価・学校関係者評価)を「職員室文化」の視点で聞き取り調査を実施し検討することはできた。また、特色ある開かれた学校づくりに取り組む小学校を事例協力校として学校評価に職員室文化を生かす共同研究に着手することができた。なお、附属校での勤務のなかで、公立小・中学校にはない「特色、例えば、教育実習や研究開発・実践研究といったミッション」に関する「職員室文化」や教職員同士の力量向上に係る「職員室文化」などの存在をより詳細に明らかにすることができた。また、平成23年度に学校と地域との連携の推進をめぐって検討できたことから、平成24年度においては、学校という「場」の再考とともに学校のパートナーとして地域の存在を整理できた。その点で「特色ある開かれた学校づくり」と「職員室文化」についての検討視点を一層明確にすることとなり、地域とともにある「職員室文化」の存在を明確にすることができた。 以上のように、研究計画を変更しながらの研究推進で平成24年度における研究目的の達成に係る進捗状況であるが、研究成果の情報発信という点で順調とは言えず、「(4)遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果に基づき、特に平成24年度で得られた改善方策に基づく、学校の取組を連携・協働して検証する。検証については、研究成果の取りまとめも考慮して、また、PDCAサイクルの早急な取組が必要なことに基づき、一学期と夏休み(3学期制の学校)において実施する。その際、学校のもつ条件性に根ざした「特色ある開かれた学校づくり」にあって「職員室文化のための取組」を推進する施策の事例研究として報告する。事例研究の公表にあたっては、リアリティある事例とするために同意を得て学校名を明示することとなるが、個人名等は匿名となるよう最大限の配慮をする。 併せて、平成24年度に実施してきた研究結果をめぐって、これまでの研究成果と総合的に考察し、研究成果を報告書として公表する。学校における年度のサイクルが4月から翌3月であることに鑑み、平成25年度は協力校の平成24年度における取組成果を分析・考察することを中心に、協力校との関係を維持して、内容の精査を行う。なお、公表にあたっては、協力校の同意を得るとともに個人名等は匿名となるよう最大限の配慮をする。 以上の成果を踏まえて、学校評価システムのあり方として、学校のもつ条件性を踏まえたチェックリストと学校経営方策についてのモデルを作成する。そのモデルに基づき、12月から翌1月において、平成24年度実施してきた連携・協働する対象校の学校評価のあり方と「特色ある開かれた学校づくり」「職員室文化のための取組」の推進方策を検証する。その検証結果をめぐって、協力校との協議に基づき平成26年度の学校評価のあり方と「特色ある開かれた学校づくり」及び「職員室文化のための取組」に向けた改善方策を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
「物品費」については、教師教育・学級経営を含む学校経営学関連図書に係る設備備品費や消耗品費に使用予定である。 「旅費」については、共同研究する事例校への実地踏査及び聞き取り調査のために使用する。なお、研究成果発表のための旅費については、平成25年度にあっては研究成果の整理の進捗状況により適宜計画し使用していきたい。 「謝金等」については、共同研究事例校での聞き取り調査の補助と資料整理補助、平成24年度実施の質問紙調査の整理補助に使用する。 「その他」は、研究成果報告書の印刷、報告書郵送料を予定している。
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