研究概要 |
本研究は,リスク認知の視点から,教職員のリスク予測とバイアスの存在について考察したものである。 今年度は,A市公立学校新規採用教職員に対して,学校事故等に関する裁判例への認識や学校における事故の発生率についてアンケート調査を実施した。この結果,第一に新規採用教職員は,保護者や児童・生徒と対応するために法的な知識が必要であると考えていることが明らかとなった。一方,学校や教職員が訴えられるという意識は半数以上が有していないという結果であった。 第二に,学校で発生する事故については,大まかなイメージは把握していることを確認することができた。体罰やいじめといった発生数及び認知件数の比較的少ない事象については,文部科学省等の調査結果数よりも過大に認識しているが,授業中の事故,部活動中の事故といった発生数の多い事象に関しては過小に認識していた。このような認識に差が生じた背景には認知バイアスを含めた個体的要因,環境的要因の存在が考えられる。 なお,参考としてB大学において教員養成課程の教育実習前の学生(3年生)の予測する学校における事故の発生率について調査を行った。また,学校での様々なリスク事象に対しての社会人のイメージ調査を実施した。 更に,法規・判例データベース等を活用し,戦後の学校における事件・事故に関する判例を検索・収集したところ,教育活動中の事故に関しては,学校側に求められる注意義務として,教員の無作為(離席や見過ごし),子どもの特性に応じた指導,教具等の利用に応じた指導等が争点となる傾向が見られた。
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