研究課題/領域番号 |
23531076
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
福本 昌之 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (60208981)
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研究分担者 |
諏訪 英広 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (80300440)
米沢 崇 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (20569222)
金川 舞貴子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (40452601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教育の情報化 / 学校経営 / 教師の力量 / ICT / 学校組織 |
研究概要 |
本研究は、学校の組織運営と教育実践のイノベーションという視点に立ち,(1)学校における情報通信技術(以下、ICT)の影響効果を分析し,(2)学校における教育の情報化を推進していくために,学校と教師の双方に求められるICT活用力量に関する基準(スタンダード)を開発することを目的とする。平成23年度は,主に以下の2つの調査研究を行った。(1)アメリカ・ミネソタ州・ミネアポリス教育委員会のICT政策の動向,および同委員会の管轄する区域の学校におけるICT活用の状況について,実地調査を行った。その結果,教育委員会の教育政策に基づき,人的・物的支援が行われ,とりわけ,教師の力量を向上させるためのOJTに力が入れられており,教育実践のなかにICTを自然に溶け込ませることに力点が置かれていることを確認した。(2)インタビュー調査。小中学校の校長および教諭に学校におけるICTの使用状況に関する聴き取り調査を行なった。校長については教育の情報化および教育におけるICTの利用の促進にかかわる課題等について,管理職の立場からの思いや自校における方針等について聞き取りを行なった。教諭については,主に授業や校務での活用状況および学校でICTを使う上での課題について聞き取りを行なった。アメリカの学校と日本の学校を比較した場合,制度的背景や文化的背景が異なることをふまえても,日本の学校ではICT活用は,その巧拙もふくめて教師の個人的力量の問題として捉えられており,学校や教育行政全体がどのようなビジョンに立ってICT活用を進めようとしているのかが不明確であること,少なくとも学校現場では管理職・教職員ともにそのような印象を強く受けていることが調査から明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた質問紙による量的調査は実施できなかったものの,当初の研究情の課題として措定していた,1)ICTというテクノロジーは,学校の教育実践の現実的な文脈に即して活用される,2)教職員の協働による組織的な教育実践の改善に寄与する,3)ICTの活用に関わる知識技術は,個々の教職員の知識・技量と組織において蓄積された知識との相乗効果として創造されるという点について,聞き取り調査で把握できているという理由による。とくに1)については,学校経営上のビジョンに基づいてICTの活用方法や活用領域が異なることが明らかになっている。これは教師にとっての実践上の文脈のなかでICTが活用されている証左である。また3)についても,学校による差はありそうだが,ICT活用ノウハウなどの知的財産が蓄積されていることを確認できた。ただし,2)に関しては当初想定していた「協働」が必ずしも明確に見えていない部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成23年度に予定していた質問紙による量的調査を実施する。予備調査に基づき,質問紙調査票を作成する。調査票は協力校の教諭等に依頼して内容等のチェックを経た後に,文部科学省調査を通じて選出した教育委員会を通じて,小学校500校,中学校500校に調査を依頼する。各校については,校長,情報教育担当者,学校事務職員,20~30代の教諭1,40~50代の教諭1の計5名を回答者として依頼する。質問内容は,ICTの利用実態を把握し,ICTの教育利用に関する見解を問うものとする。2.当初予備調査として位置づけていた比較のための調査をミネソタ州ミネアポリスの学校において行なう。主な内容は,ICT活用による教育効果,ICTの活用領域とその評価,および各学校のOJTの状況について情報を得ることを目的とする。3.国内のフューチャースクール事業について情報収集を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.平成23年度に予定していた質問紙調査を実施するため,郵送費,印刷費,データ入力費。2.旅費。調査および学会発表。3.とくに量的データの集約に関して調査対象校に報告するための中間報告書の印刷費。
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