研究課題/領域番号 |
23531078
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
岡村 弘 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30141732)
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研究分担者 |
関島 英子 日本保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (10269508)
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キーワード | NIRS / 音楽胎教 / 母親の歌声 / CD / オルゴール |
研究概要 |
本研究は、胎児および乳児への音楽的関わりが、乳児期から幼児期にかけて脳の発達に及ぼす影響を調査し、その特徴的傾向を導き出すことによって幼児期以降に起こす問題行動の原因に対する音楽的働きかけの有効性を検証し、出産前後における母親の、胎児及び乳幼児への音楽的関わりの重要性を明らかにすることを目標としている。 初年度は、事例の少ない新生児へのNIRS(近赤外光脳機能測定装置)の装着によるリスクを避け、安全を期すために、幼稚園児および学生について、NIRSを使用して、デジタル音と自然音の聴取時における脳内の神経活動の相違を測定した。 本年度は、埼玉県内のクリニックにおいて妊娠16~19週の妊婦に対して音楽胎教塾を開催し、新生児への測定の協力をお願いした。1年間を5期に分け、各期3~5回の講座を設け、その中で、音楽胎教の実践練習、音楽胎教についての講義などを行った。また、NIRSについても十分な説明を行った。参加者は全体で50名くらいで、40名くらいの新生児の測定ができた。測定は、母親の歌う声と、それをICに録音したもの、貸与したオルゴールとそれをIC録音したものをそれぞれ新生児に聴かせ、NIRSで計測したが、種々のパターンの脳内神経活動を確認することができた。この脳内神経活動のパターンの分析については次年度予定しているが、生後4日以内の新生児の脳内神経活動がはっきりした形で出てきた意義は大きく、胎教音楽を行うことが、新生児の脳の発達に深くかかわっていることを実証できる可能性がある点で、重要であると思われる。 さらに、1~2期生は出産後すでに半年を経過しているので、出生半年後の乳児の発達などの状態をアンケートによって調査したが、出生後の乳児の発達が音楽胎教の影響にあるという報告が多く記されており、今後の継続的な調査によっては重要で意義深い結果が得られると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新生児への測定を開始した当初、新生児のための適当な装着装置が無く、開発したプローブの試行錯誤を繰り返したため、本格的測定に入るのが予定よりも若干遅れた。 日本での測定に時間がかかりすぎたために、韓国でのアンケート調査にまで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度測定および調査した資料を分析し、考察を行って国際幼児教育学会(IAECE)、環太平洋乳幼児教育学会(PECERA)、日本音楽教育学会などで発表していく予定でいる。 また、昨年度から継続して生後半年後および1年後の乳児の発達状態についてアンケート調査を実施する予定でいる。 できれば、今回の研究において協力が得にくいレディースクリニックにおけるコントロール群となる新生児(すなわち、音楽胎教を実施していない妊婦から生まれた子)への測定を模索している。 さらに、韓国におけるアンケート調査の可能性を韓国在住の大学関係者に打診していく予定でいる。 ただ、新生児の測定は困難を極めた中で何とか終えることができたが、生後半年、生後1年の乳児に関しては、今の方法ではかなり困難であるので、今後どのように測定していくかを再検討していく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費としては本年度は特に予定はしていない。 旅費として、韓国でのPECERAでの発表のための交通費、宿泊費、参加費など。国際幼児教育学会、日本音楽教育学会、全国大学音楽教育学会での発表のための交通費、宿泊費、参加費など。学会誌への投稿に関わる費用など。 その他、アンケート協力者(被験者)への謝礼、通信費。測定資料の整理分析に関わる協力者の人件費、交通費、通信費など。 以上の項目に研究費を使用する計画を立てている。
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