研究課題/領域番号 |
23531079
|
研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
森下 英美子 文京学院大学, 人間学部, 研究員 (40565545)
|
研究分担者 |
中山 智晴 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70207950)
小栗 俊之 文京学院大学, 人間学部, 教授 (80306381)
酒井 聡一 文京学院大学, 人間学部, 非常勤講師 (90449322)
|
キーワード | 野外環境教育 / 環境条件 / 幼児 / ムッレ / スウェーデン / 教育施設 |
研究概要 |
平成24年度は、平成23年度に実施したスウェーデンにおける野外環境教育実施幼児教育施設と未実施幼児教育施設の比較調査の結果分析を行った。分析結果の中から、調査参加者に対して実施したフォーカグループスインタビューの結果を日本野外教育学会大会にて発表した。野外環境教育が子どもに与える効果の視点で分析を行い、自然環境そのものが持つ効果と指導者がそれをいかに伝える力を持つかが野外環境教育における重要な課題であることが示された。スウェーデンの幼児教育施設で記録した人的環境、物的環境に関する調査データの解析も同時進行で進め、発表は次年度に行うこととなった。 日本国内においては、幼児教育施設の環境特性の広域視点における調査を実施した。調査は、埼玉県内の幼稚園641園、保育園1364園、新潟県内の幼稚園161園、保育園774園を対象とした。それぞれの園を中心に、幼児が歩いて移動できる範囲として半径500メートルの円内に含まれる植生、土地利用をGIS(地理情報システム)を用いて分析した。さらに幼児教育施設のタイプを分類するために、クラスター分析を行い、県別にタイプ分けを行った。埼玉県の幼児教育施設は都市よりに分類される施設が多く、新潟県の幼児教育施設は農村よりに分類される施設が多かった。 スウェーデンで視察を行った幼児教育施設の環境特性と日本の幼児教育施設の違いは、スウェーデンの幼児教育施設周辺には農地がなかったが、日本の幼児教育施設の周辺環境には農地が含まれる施設が多かったという点であった。日本での野外環境教育プログラム開発には、農地の存在を無視することはできないと考えられる。また、駅前保育園などに代表される都市型幼児教育施設においては、都市公園や街路樹の活用がポイントとなる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、スウェーデンにおける野外環境教育実施幼児教育施設と未実施幼児教育施設の比較調査を実施した。調査実施前には、スウェーデンでは、所有権に関係なく誰でも自然の中で過ごしてよいという自然享受権を持ち、アウトドア活動が盛んであるということから、幼児教育施設が立地として自然の多い環境にあることが、野外環境教育実施のインセンティブを高めている可能性があると予測し、立地条件の環境特性に注目したが、実際の調査では立地条件だけが野外環境教育を推進する要因ではなかった。 平成24年度の分析では、自然環境そのものが幼児向け環境教育に対して持つ効果が確認され、自然がそこにあるだけでは十分ではなく指導者の伝える力が効果を導き出すことが確認された。さらに、人的環境、物的環境の観点から野外環境教育実施幼児教育施設と未実施幼児教育施設の比較を行った。 平成24年度は、幼児教育施設の環境特性の広域視点における調査を実施した。調査方法は、埼玉県、新潟県の2940園について、園を中心に、幼児が歩いて移動できる範囲として半径500メートルの円内に含まれる植生、土地利用の環境をGIS(地理情報システム)を用いて分析した。幼児教育施設のタイプ分けを行うために、クラスター分析を行い、県別にタイプ分けを行った。 以上の研究により、1.スウェーデン、日本の幼児環境教育施設関係者に対する野外環境教育への意識調査、2.スウェーデンにおける幼児野外環境教育の実施・未実施園施設の周辺の環境特性調査と実施内容の関連性調査、及び、3.スウェーデン式の野外環境教育を日本国内で広く導入できる可能性の追求と教育プログラム開発・展開のための日本の幼児教育施設の環境条件の調査として、GISを用いた幼児教育施設の周辺環境の調査が完了した。平成23年~24年の調査は、ほぼ予定どおりに進捗していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、過去2年間に実施してきたスウェーデンにおける幼児向け野外環境教育実施園の特徴、野外環境教育推進上での物的環境条件、人的環境条件、日本での幼児教育施設の立地条件等の調査のまとめの時期に入る。さらに、これまでの研究結果をもとに、日本の幼児教育施設における環境条件と環境教育プログラムの関連性、実施状況の分析を行う。 また、本研究の中では当初対象としていなかったが、調査を進めていくに従って、スウェーデンの野外環境教育である「森のムッレ教室」と同様に北欧の国デンマークで発祥した野外教育「森のようちえん」に関しても比較調査する必要性を感じてきた。そこで、平成25年度には、スウェーデンの「森のムッレ教室」実施園、及び、デンマークの「森のようちえん」を訪問し、立地条件、人的環境、物的環境の比較調査を実施する。 以上の調査結果をもとに、幼児向け環境教育施設にて野外環境教育を進めるための環境条件として効果的な条件を、自然環境、物的環境、人的環境それぞれにおいて抽出し、整理する。さらに、整理された環境条件をもとに、日本の幼児教育施設の現環境の分類を行い、それぞれの園のタイプにおいて効果的な自然環境条件、物的環境条件、人的環境条件を検討する。 また、日本における幼児環境教育施設の環境条件の整理を行い、環境条件に適した最環境教育プログラムの提案を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、スウェーデンの農村地帯にある「森のムッレ教室」実施幼児教育施設、及び、デンマークの「森のようちえん」の立地条件、人的環境、物的環境の視察調査、資料調査の実施、国内幼児教育施設調査、解析や翻訳の人件費等に使用する予定である。
|