3年間の研究プロジェクトの最終年度として、チャータースクールや私立学校というボランタリーな学校法人を特徴付ける社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)について、理論的な分析をおこなった。その成果は、日本教育社会学会『教育社会学研究』(第94集)に「社会関係資本のエートス論」と題した論文として公表した。同論文では、まず、ジェームズ・コールマン、ロバート・パットナム、ピエール・ブルデューという代表的な社会関係資本論の理論的特質を析出した。その上で、それらの理論と「学びの共同体」論などの教育理論との接点を明らかにして、ハビトゥスや心の習慣の再評価と関わる教育学の理論的課題を提示した。 もう一つの研究実績は、学校マネジメントの核心に位置付くカリキュラム・マネジメントの分析をおこなったことである。初等中等学校であるチャータースクールや私立学校だけでなく、それと接続する大学のカリキュラム・マネジメントにも視野を広げて分析をすすめた。その成果の一端は、「学部カリキュラムの考え方と全体像」(『キャリアデザイン学への招待』ナカニシヤ出版に所収)として公刊した。同論文では、カリキュラムのシークエンスとスコープの設計だけでなく、実社会や学生生活との接続、及び学生履修のルールや組織的な履修支援の重要性を指摘した。後二者は、初等中等学校においても、教える側の設計思想だけでなく、学習者の行動特性も視野に収めた複眼的視点を持たねば、カリキュラムの実像に迫れないことを提起するものである。 以上が、具体的成果をともなった研究実績であるが、シカゴ大学が設置運営する三つのチャータースクールを現地調査したことも申し添えておきたい。大学がいかに初等中等学校の学校改革に関わるかという点で、示唆に富む先進事例であるからである。
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