研究課題/領域番号 |
23531088
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研究機関 | 日本教育大学院大学 |
研究代表者 |
吉良 直 日本教育大学院大学, その他の研究科, 教授 (80327155)
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研究分担者 |
北野 秋男 日本大学, 文理学部, 教授 (50169869)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 若手教育者養成 / ティーチング・アシスタント / 大学教員準備プログラム / FD / アメリカの大学 |
研究概要 |
平成23年度には、過去の科研費研究の成果を発展・深化させ、比較分析手法の開発と若手教育者養成制度の全貌の解明を目的として、2度の訪米調査を実施した。第一回目の訪米では、研究代表者の吉良直と研究分担者の北野秋男が、8月下旬から8日間の日程で訪米し、首都ワシントンD.C.とコロラド州ボルダー市で、(1)大学院協議会(CGS)、(2)ナショナル・ポスドク協会(NPA)、(3)コロラド大学ボルダー校を訪問し情報収集と意見交換を行った。特に、上記(2)では、1993年から10年間実施された大学教員準備プログラム(Preparing Future Faculty, PFF)の新規のプログラムが企画されていることがわかり、上記(3)では、充実した若手教育者養成制度を先進的に開発してきた大学のプログラムのスタッフと面談し有意義な情報収集を行った。 第二回目の10月の訪米では、研究代表者の吉良が、27~30日にジョージア州アトランタ市内で開催されたアメリカをベースとして高等教育機関の授業改善や組織改革を推進してきた国際的FD学会であるProfessional and Organizational Development Network in Higher Education(以下「POD」と略す)の第36回年次大会に参加した。大会中に、FDの文脈の中でプレFDと位置づけられる若手教育者養成制度の実態に関する発表に参加し、主要な発表者と面談し最新情報を収集するとともに、マサチューセッツ大学アマースト校のFDセンター長でPOD元会長でもあり、本研究に関して助言を下さっているDr. M.L. Ouellettと本研究について意見交換を行った。 国内では、2月に東北大学で開催された大学教員準備プログラムで、3月に京都大学で開催された大学教育研究フォーラムで、それぞれ研究成果を基に招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、アメリカの研究大学における大学院生のための先進的で段階的な若手教育者養成制度の理念と実態の解明を目的とする。具体的には、学士課程教育、大学院教育の改善といった高等教育改革の視点から、ティーチング・アシスタント(以下、「TA」と略す)制度、TA養成制度、そして大学教授職を目指す研究大学の大学院生のための大学教員準備プログラム(Preparing Future Faculty、「PFF」と略す)を含む若手教育者養成制度の理念と実態を多角的・構造的に明らかにし、最終的には日本への提言をまとめることを目指している。本研究では、第一に、全米規模の組織や財団の担当者や重要な役割を果たしてきた大学の教職員との面談、並びに文献レビューを通して、TA養成に特化したTADからGSPDと呼ばれる段階的な若手教育者養成制度へと移行した過程とその実態を解明すること、そして第二に、TA制度、TA養成制度、PFFを含む大学院生のための若手教育者養成制度の実態を解明し、これまでの研究で着手してきた大学間のプログラムの比較分析手法を開発することを目的としている。 第一の段階的な若手教育者養成制度へと移行した過程とその実態解明に関しては、平成23年度に先進的な事例となるコロラド大学ボルダー校を訪問し、PODにも参加し、情報収集を行うことができたため、順調に進展していると言える。第二の大学間の比較分析手法の開発に関しては、教授・学習センターの活動が、大学内の改革や不況による予算削減による人員削減等によりかなり変化することが分かってきたので、当初計画していたような完成度の高い分析手法の開発は困難となっているが、今後そのことを考慮してどのような分析手法を開発できるかを検討していく。総括すると概ね順調に進展しているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、本研究では、第一にTADからGSPDと呼ばれる段階的な若手教育者養成制度へと移行した過程とその実態の解明、第二に大学教員を目指す大学院生に提供されるプログラムやサービスの大学間の比較分析手法を開発することを目的としている。今後の研究の推進方策としては、平成24年の8月末にはアイビー・リーグに名を連ねる名門のエール大学等を訪問し、10月末にはPODの年次大会に参加し、GSPDを推進してきた大学関係者から情報収集を行い、さらに図書館等での文献検索も行うことで、上記の2つの課題に取り組んでいくことを計画している。 エール大学では、主として大学院生の教育力養成のために学内でサービスを提供しているGraduate Teaching CenterのディレクターであるDr. W. Randoとセンターのスタッフと面談する予定である。Dr. Randoはセンターのディレクターとしてだけでなく、POD等の全米組織でもGSPDを推進してきた人物であり、エール大学の実態だけでなく、全米の動向についても精通しているため有意義な訪問になることを期待している。さらに、10月末のPODでは、昨年の訪問に続き、大学院生の段階的な若手教育者養成制度に関する学会発表を聞き、発表者や過去に訪問した大学のスタッフから情報収集を行い、加えて、本研究に関して海外から助言をいただいているDr. Mathew L. Ouellettと本研究について意見交換を行う予定であるが、有意義な情報収集の機会となると考える。このような活動を通して収集した情報を分析し国内の学会で発表し、最終的には平成25年度のPODで発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、研究代表者の吉良直と研究分担者の北野秋男が8月末に訪米調査を行い、研究代表者の吉良が10月末にも訪米調査を行うので、研究費は主として海外旅費として使用することを計画している。8月末はアメリカ北東部のニューヨーク郊外のエール大学等を訪問し、10月末にはワシントン州シアトル市で開催されるPODに参加予定である。さらに、国内旅費が必要となる学会参加としては、5月末には北海道大学で開催される大学教育学会、平成25年3月中旬には京都大学で開催される大学教育研究フォーラムに参加する予定である。その他には、昨年度までと同様に、先行研究を収集し文献研究も継続的に行うため、消耗図書費を含む物品費が次に多くなる歳出項目である。 平成25年度は、平成23年度からの3年間の研究の集大成として、様々な形で研究成果を発信していく予定なので、国内外の学会参加のための旅費がまず必要になると考える。特に、平成25年10月末にPODに参加し研究成果を発表する予定なので、海外旅費が必要となる。さらに国内の大学教育学会、京都大学大学教育研究フォーラム等に参加するための国内旅費も必要となる予定である。さらに、先行研究の分析を継続するため物品費と、これまでの研究成果を報告書の形でもまとめる予定なので、その印刷費、郵送費が次に多くなる歳出項目である。
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