研究課題/領域番号 |
23531093
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
藤原 瑞穂 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (90269853)
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研究分担者 |
堀 薫夫 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60173613)
前田 潔 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (80116251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢者 / 学習 / 障害 |
研究概要 |
本研究は,障害をもつ高齢者の学習を支援するために,3方向からの支援事例・経験を蓄積・分析することによって学習支援プログラムを作成することを試みる.第1の層は,現在学習活動を行っている者(公民館などで活動する団体・サークル),第2の層は,発症・受障直後の者(脳血管障害などにより回復期リハビリテーション病棟に入院し,自宅退院が決定している者),第3の層は,発症・受障から数年が経過し,介護保険制度下でのサービスを利用している者(介護老人保健施設利用者)である. 本年度は,障害をもつ高齢者の学習支援プログラムに関する先行研究の分析ならびに国内の先駆的実践を行っている施設約3カ所のフィールド調査を行い,支援プログラムの作成にむけた課題を抽出した.また,研究協力施設への打診を行うことも本年度も課題であった. まず,高齢者学習の理論的根拠を探るために「ポジティヴ・エイジング」「高齢者学習の理論」「高齢者学習の内容編成論」という3つの視点を中心にレビューを行い,高齢者学習の可能性指摘した.また,障害をもつ高齢者への支援として,リハビリテーションとりわけ作業療法の領域での実践例をレビューした.そのなかで,学習ニーズの十分な把握ならびにアウトリーチ・プログラムの重要性が明らかになった. 次に,介護老人保健施設のデイケアならびにデイサービス施設の調査を行った.脳血管発症後,90歳で初めてパソコンを習い日記をつけている方の事例,障害をもった後の生活の再構築のための支援を施設全体で取り組んでいる例などがあった.学習成果を定量的に測定している施設は見られなかった.成果測定や学習評価をいかに行うかが課題として指摘された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者の学習支援のための理論分析ならびにプログラム作成の手がかりとなる内容編成論については,予定通り取りまとめた.障害をもつ高齢者への学習支援に関する先行研究は,ハビリテーションとりわけ作業療法の領域での実践例について検討した.事例数が少ないこと,また「学習」と「リハビリテーション」の概念整理を明確にする必要性があることが新たに課題としてあがり,次年度も引き続き検討することにした.また,成果測定,学習評価の方法論についても引き続き検討することが必要である. 障害をもつ高齢者の学習支援について,先駆的な取り組みを行っている施設の調査を3カ所実施した.平成23年度内に具体的なパイロットスタディへの研究協力施設の決定には至らず,この点が,本研究が「やや遅れている」理由である.現在打診している最中である.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基に,研究協力施設でのパイロットスタディを実施する.具体的には,学習支援者とともに,各施設2名程度に対して支援プログラムを作成し実施する.プログラムの成果測定には,Barthel Index,Physical activity scale for elderly care requiring,老研式活動能力指標,主観的健康感,Health utilities indexならびに生活の変化と学習状況,満足度に関するインタビューを用いて,プログラム開始前後の変化を検討する. (1)参加者:兵庫県を中心に協力施設を利用し,以下の7つの条件を満たす者に対する学習支援プログラムを作成する.(1)60歳以上 (2)自宅で生活を送っている (3)発症から3ヶ月以上経過し,医学的な症状は安定 (4)MMSEで18点以上 (5)学習へのニーズがあるが,困難を感じている (6)兵庫県内の協力施設に週1回程度通うことができる (7)研究の参加に同意の得られたもの(2)上記参加者が利用する協力関係機関への研究協力依頼 平成25年度は,平成24年度に得られた結果を基に,研究協力者とともに支援プログラムを作成・実施・評価を行う.プログラムの内容,頻度,期間は,支援者ならびに参加者と協議して決定する.参加者は平成24年度と同じ条件で募集し,プログラムの成果測定指標は,平成24年の結果を経て再検討を行う.対象者は,各施設5名程度を予定している.介入期間は 年度末までに,関連学会(作業療法学会,老年社会科学会等)での研究成果の発表ならびに関連学会への研究成果の投稿を予定している.また,WFOT (World Federation of Occupational Therapy) 2014 congress(横浜)で報告にむけて演題登録する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度:謝金は,パイロットスタディに関わる研究協力者,支援者,研究補助者ならびにデータ入力等に従事するアルバイトへの支出を予定している.また,10月までに障害をもつ高齢者への学習支援プログラムの作成に関する専門的知識の提供(精神医学,老年学等)を受ける予定である.旅費は謝金と同様に,パイロットスタディに関わる研究協力者,支援者,研究補助者ならびにパイロットスタディに関わる研究者に支出する予定である.また,障害をもつ高齢者の学習支援に関連する最新の知見を得るために,作業療法学会(6月 宮崎,藤原),作業科学セミナー(7月 北海道,藤原),日本社会教育学会(10月 北海道,堀)等への出張を予定している.消耗品費として,パイロットスタディに関わる物品費の購入,図書費(成人教育関連,リハビリテーション関連,支援論関連の図書費ならびに文献複写)等を予定している. 平成25年度:研究協力者とともに支援プログラムを作成するために,研究協力者,支援者,研究補助者への謝金ならびに臨床現場への交通費を支出する予定である.また,研究成果の発表として,作業療法学会(大阪),老年社会科学会等への出張を予定している.
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