平成26年度の研究は、以下のように実施した。今年度は、前年度の調査によって明らかとなった新たな学校の取り組みを調査した。神奈川県教育政策でのクリエイティブスクールの取り組み、大阪府の高校政策に導入されたデュアルシステム、北海道の教育困難校による個別の取り組み、米国での生徒支援のプログラムを調査し、生徒の「諦め」意識と低い将来への希望が、家庭環境に強く影響される現状を聞き取り、そういった意識の払拭と自己肯定感の育成、そして高校卒業後の積極的な社会的自立への意欲につなげるための支援策の事例を分析した。また、本研究の最終年度である今年度は、日本学校教育学会、日本学習社会学会、日本特別ニーズ教育学会等において、これまでの国内外の調査結果をまとめ研究成果を発表した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果については、以下の通りである。本研究では、教育困難高校の調査及び米国の経済的文化的な貧困環境に位置する学校を中心に調査をおこなった。その結果、日本の場合、生徒に不足する文化的資本を学校教育が直接補完する現状にはなく、自己否定感や諦め意識の改善のためには、生徒個々の学力にできるだけ応じた基礎学力の向上による成功体験の蓄積を目指した支援がなされていることがわかった。ただし、学校が地域の協力を得て、生徒が将来に希望を持ち卒業後に社会的自立を目指せる取り組みもなされており、その中には今後の展開に期待できる事例が生まれている。米国の取り組みでは、生徒の出生と家族、生活環境と文化的背景に生徒が誇りを持てるように工夫された授業内外の教育支援が注目される。それらの実践により、生徒は社会生活への自信と意欲を高め、自らの成育に自尊心を持つなど、学校教育が生徒の成育過程で不足していた文化的資本を補完する役割を果たしていることがわかった。
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