研究課題/領域番号 |
23531103
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大川 一毅 岩手大学, 評価室, 准教授 (20267446)
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研究分担者 |
西出 順郎 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (20433112)
山下 泰弘 山形大学, 企画部, 准教授 (40313431)
嶌田 敏行 茨城大学, 評価室, 助教 (00400599)
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キーワード | 大学 / 卒業生サービス / 同窓会 / 中期目標・中期計画 / 大学マネジメント / キャリア支援 / 大学後援 / 愛校心 |
研究概要 |
大学における卒業生サービスをテーマとした本研究課題において、平成24年度は以下の1から4を実施した。 1 国立大学法人中期目標・中期計画及び年度計画の記載を活用・分析し、これまで明確な定義がなく、また全容も把握しにくかった国立大学の卒業生事業の体系化を試みた。その上で、国立大学の置かれた状況(類型)ごとに卒業生事業の現状把握を行い、各大学の特性に起因する卒業生事業の促進・阻害要因を明らかにした。本研究は日本高等教育学会第15回大会で報告した。 2 国立大学の全学同窓会に着目し、その設置動向や設置背景、及び組織の目的や機能について調査を進めた。訪問インタビューも含めたこれら調査により、国立大学の全学同窓会組織は、大学と卒業生との「媒介(インターフェース)」の役割を期待され、さらに卒業生相互をつなぐ学部横断的ネットワーキングの機能を果たしていることが明らかとなった。本研究は日本教育社会学会第64回大会で報告した。 3 これまでの検討及び訪問調査をふまえ、地方国立大学での適用を想定した卒業生事業の概念モデルの構築、及び未だ一般化されていない「卒業生事業」の概念的定義を試みた。ここでは、卒業生事業の概念モデルとして、インパクト・セオリーの異なる「ボランタリー・モデル」と「パートナーシップ・モデル」といった2つのモデルを提示した。本研究は「大学探求」VOL.5(琉球大学大学評価センター・ジャーナル)に投稿した。 4 我が国大学における卒業生サービスの総体的実施状況については、管見の限り明らかにされてはいない。そこで、国公私立すべての771大学を対象とした「卒業生サービス実施状況」アンケート調査を企画し、平成25年3月に発送・回収した。その集計と分析は平成25年度の研究課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の三箇年期間は以下の3ステップで展開する。すなわち、①国立大学における卒業生サービス事業の実施状況調査と分析、及び先導的大学の事例収集、②地方国立大学に焦点をあてた卒業生サービス事業の実施環境分析とその実証調査、③卒業生サービス・マネジメントの基本的枠組みの提示、である。平成24年度は上記②及び③の遂行期間である。 ステップ②については、国立大学中期目標・中期計画及び年度計画等記載の定量的分析をもとに、地方国立大学も含め、国立大学の置かれた状況(類型)ごとの卒業生事業の現状把握を行い、大学特性に起因する卒業生事業の促進・阻害要因を明らかにした。また、国立大学の全学同窓会事業について、その設置動向や設置背景、組織の特性などを精査し、これら校友組織が果たしている意味と課題を明らかにした。ステップ②の研究遂行にあたっては、特色ある卒業生事業を展開する国私立大学の訪問インタビューも実施した。 ステップ③に関しては、地方国立大学での適用を想定した卒業生事業の概念モデルの構築、及び「卒業生事業」の概念的定義の確立を試みた。これによって卒業生事業における概念モデルを可視化し、2つのモデルを提示した。 このほか、次年度研究に備え、全国国公私立771大学への卒業生サービス実施状況アンケート調査を企画し、平成25年3月に発送・回収した。 平成24年度研究の成果は、学会での口頭報告が2件、論文報告は現在投稿中のものが1件ある。なお、平成25年5月開催の日本高等教育学会第16回大会にも研究報告を申請し、発表要旨を提出している。 以上のことから、卒業生サービス実施にあたっての阻害・促進要因の抽出や、地方大学に焦点を置いた検証などはまだ十分ではないが、これらは最終年度の課題とし、交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度については、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、平成25年3月に発送回収した全国国公私立大学アンケート調査の分析を進め、日本の大学における卒業生サービスの現況を総体的に明らかにする。その中から独自の取組や先導的取組を展開する大学事例を抽出し、訪問調査も行う。これら調査分析の成果は、学会で報告するとともに、分析結果の概要をアンケート協力大学に還元する。 また、これまでの調査分析結果及び考察を礎石とし、大学が卒業生サービスを実施する上での促進要因及び阻害要因についての考察を進める。これを踏まえ、地方大学も含め、大学特性(類型)ごとに、卒業生サービスとして開拓が求められる事業(ニーズ)と、大学が実施可能な事業(シーズ)を提示する。 最終年度である本年は、大学が卒業生サービスを実施することの意義と可能性について総括的に検証する。研究成果については、学会での口頭報告2件、学術論文報告2件を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は本研究課題の最終年度である。これにあたり、全国大学アンケート調査の結果をふまえて実施する訪問ヒアリングの経費(旅費等)、学会報告や研究打合せなどの経費(旅費等)、アンケート協力大学に還元する調査結果報告の作成とその発送経費(印刷費、発送費)、データ入力や翻訳等の謝金、その他書籍やデータベースソフト等の物品費などが主なものとなる。 なお、アンケート協力大学に提供する報告書の作成・印刷経費、及び発送経費を勘案すると、平成25年度分研究費では不足することが予想されたため、研究代表者の平成24年度研究費を計画的に繰り越して平成25年度経費不足分を補填することとした。
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