本研究は、高等教育における新しい地域的性質や機能を検討することを目的としている。当該年度に重点的に取り組んだ人材養成の側面における取り組みについての事例研究では、それらの大学における共通した課題が浮き彫りになった。それは、教育課程を設置するための設置経費の問題と関連する産業の規模の問題である。 前者について事例とした大学では、いずれも外部資金を多く活用していた。そしてその資金が、寄付金であった場合には活用の自由度は相対的に高いが、行政機関等による助成金であった場合、その経費の目的によって設置される教育課程の性格が大きく影響を受けていることが確認できた。また同時に、それらの経費に時限が付されていた場合、設置される教育課程も助成終了後の状況をにらんだものとなる。 後者については、教育および就業の安定的な継続性を確保しようとすれば、彼らの主たる就業先として想定される産業にある程度の規模が必要となる。しかし、教育課程が地域性の高いものであればあるほど関連した労働市場の規模が小さい場合が多く、地域的性格を後退させる要因となっていた。教育を通じた地域との連携・貢献における難しさのひとつといえる。 これらは、大学における人材養成の機能を強調する取り組みとみることができるが、国外ではそうした機能を大学の外部に設置する取り組みも進んでいる。職業準備教育の性格を持つプログラムの開設・認証に関わる外部機関を持つことで、人材養成、職業教育、地域貢献などさまざまな側面において、大学が大学として追求すべき目標とそうでない側面とを明確化し、それらを並置できる可能性が拡大する。学科やコースなどといった堅い教育課程を設置し、人材養成面における地域性を発揮することはきわめてすぐれた取り組みであるが、柔軟な教育プログラムを併用することでより地域性を高めた人材養成が可能になる可能性が指摘できる。
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