研究課題/領域番号 |
23531107
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
前田 早苗 千葉大学, 普遍教育センター, 教授 (40360739)
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研究分担者 |
早田 幸政 大阪大学, 評価・情報分析室, 教授 (30360738)
工藤 潤 (財)大学基準協会(大学評価・研究部), 大学評価・研究部, 研究員 (70360740)
堀井 祐介 金沢大学, 大学教育開発・支援センター, 教授 (30304041)
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キーワード | 高等教育 / 教養教育 / 質保証 / アクレディテーション / 学士課程 / カリキュラムポリシー |
研究概要 |
今年度は、①国内大学の調査と②アメリカの評価機関及び大学の調査を実施した。 ①については、広島大学、新潟大学、関西大学における教養教育の教育課程編成、実施の方針と具体的な実施体制に関するインタビュー調査を行った。広島大学は、教養教育本部を常設組織として設置し、教養教育の責任体制を強化するとともに学長の教養教育改革の意向を反映できるようにしたこと、教養教育の到達目標型教育を言語化・可視化していること、新潟大学は、専門教育と教養教育の区分を廃止し、いわゆるナンバリング方式を用いてカリキュラムの体系化を図っていること、関西大学では、全面改訂された教養教育のカリキュラムの検証時期を迎え、カリキュラムの体系性の確保、単位制度の実質的運用の確保、教養教育のクオリティ・コントロールの効果的実施などの検討が進められていることが明らかとなった。 ②については、東海岸のマサチューセッツ州を中心に、ニューイングランド地区基準協会、ボストンカレッジ、オーリンカレッジ、ブライアントユニバーシティに調査を行った。 ニューイングランド地区基準協会では、機関別評価の中で、ジェネラルエデュケーション(以下、GE)の評価がどのように位置づけられているのか、連邦政府からのアウトカム評価重視の要請にどのように対応しているのかについてインタビュー調査を行った。ボストンカレッジでは、イエズス会系の大学として、建学の理念が明確であるがゆえにGEの枠組みは15年から変えずにカリキュラムを運営していることおよびそのカリキュラムの具体について、オーリンカレッジでは、講義と実験を合体させた、アメリカでも新しい授業形態による教育の狙いとその効果について、ブライアントユニバーシティでは、社会のニーズや専門分野別評価機関からの要請にこたえたカリキュラム改革について、それぞれインタビュー調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、①大学への訪問調査から、教養教育と専門教育をどのように位置づけ相互にどう関係づけて「学士課程教育」を確立しようとしているのか、② 機関別認証評価機関は、教養教育の評価を「学士課程教育」の質保証の中にどのように位置付けているのか、③ アメリカの大学では教養教育を学士課程教育にどのように位置づけ、学修成果測定等を中心に、どのように質の保証を行っているのか、を明らかにすることにある。 ①については、教養教育の提供方法の異なる3つの大学への訪問調査から、教養教育の実施組織を新たに設置して強化する大学、教養教育と専門教育の垣根を取り払い、一体的に教育提供を行う大学など、それぞれの教育の特色と質保証の取組の工夫を見出すことができた。また、教養教育の質保証システムの確立にはなお経験と実績の蓄積が必要であることも一定程度明らかにできた。 ②については、第2期を迎えた認証評価機関が機関別評価の中で、「学士課程教育」という新しい枠組みの中で、教養教育に関してどのような評価基準を用意し、具体的にどのように評価を行うのかを明らかにした。 ③については、2年間で、7大学への訪問から、教養教育のカリキュラム編成方針の特徴、大学の設置形態やミッションに由来する教養教育の実施体制、質保証の具体的な取組など、具体的な状況の聴取と資料収集・情報を得るとともに、2つの評価機関から、最近の高等教育政策動向との関係での質保証のあり方を教養教育を中心に調査できた。 これらはいずれも当初の予定に即したものであり、研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である25年度は、①これまで国内調査した大学とは異なる特色をもった大学や先進的な取組を行っている大学(比較的規模の大きい大学)4、5校に訪問調査を行い、事例収集に努めるとともに、②これまで訪問調査したアメリカの大学および評価機関の情報収集を、当該機関のウェブページやメールでの補完的調査等で行う。③両国の高等教育政策動向が、近年の教養教育への取組にどのような影響を与えているかをウェブページ等で確認し、調査結果および収集した情報の分析の際に検討する。 これらの調査研究から、①国内の大学、とりわけ規模が大きく多様な専門領域の学部を擁する大学において実施されている教養教育の教育体制(責任組織の有無とその位置づけ・権限、専任教員の関与の程度など)、学士課程における位置づけ(専門教育と教養教育のカリキュラム上の関係、期待される学習成果など)、質保証への取組(教養教育固有の質保証のあり方)について整理する。②アメリカについても同様であるが、とりわけ質保証において学習成果測定に具体的にどのように取り組んでいるのかの事例の収集・整理に努める。 さらに、③日米の大学での教養教育とその質保証への取組の実態を明らかにし、取組をいくつかの類型として提示することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費として、国内大学(4、5大学)の調査のための旅費として14万円を予定している。このほか、研究成果の分析および研究成果のとりまとめに必要な研究会開催のための旅費に8万円、最終成果報告書印刷費として25万円、これらの活動に必要な経費として物品費3万円、計50万円の使用予定している。 なお、24年度にさらに国内の2大学に訪問調査するための旅費を用意していたが、1大学は旅費が必要なかったこと、もう1大学については調査の日程が確保できなかったことから、その分の旅費は25年度に使用して調査を行う。
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