本調査の課題は、以下の三点である。 1.保護者の学校参加や子育てネットワークなどの場では、どのようなつながり(社会的関係)が構築されているのか。そこで、どのような資源(情報、信頼関係、規範)が生成されているのか。親はそれらの資源を子どもの教育にどのように活用しているのか。2.親の社会関係資本の質、親の社会関係資本の子どもの教育達成への影響力は、家庭の経済的・文化的資本により異なるか。3.日本社会の現実を踏まえて、日本では、社会関係資本という概念はどのように定義され、どのような尺度(質問項目)で計測されるべきか。 都内の社会経済状況の異なる二つの区から、対象校2校を選定した。恵まれた地域に立地する学校、厳しい地域に立地する学校、それぞれ5名の保護者を対象にインタビューを実施した。個別インタビューをとおして、親が他の保護者や、学校や、コミュニティとどのような機会を利用してつながりを構築しているのか、何故様々な活動あるいはグループに参加するのか・しないのか、そのつながりから得られた資源に対してどのような意味づけをしているのか、それらの資源をどのように子育てや子どもの教育に活用しようと意図しているのかを聞きとった。 関係性を多面的に捉えるために、学校教員や、地域と学校を結ぶ役割の地域コーディネーターや、行政で子育て支援を行っている担当者のインタビューも実施した。インタビューデータは「構築される関係」およびそこから得られる「資源」の「質の多面性」および「その活用のメカニズム」という観点で分析を行った。
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