研究課題/領域番号 |
23531116
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 雅子 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20312209)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バカロレア / 大学入試の国際比較 / 国際オプションバカロレア |
研究概要 |
平成23年度は、フランスバカロレア大論述問題の論文形式(ディセルタシオン)が、どのようにアメリカのSATの論述形式(エッセイ)と異なるのかを、論文形式が生まれた歴史・社会的背景をもとに明らかにし、論文にまとめた。また6月には、日・米・仏の思考表現法の違いを国際学会にて発表し、3月から4月の初めにかけてリヨン市のリセとコレージュ(Cite Scolaire International)にて、バカロレア準備教育の調査を授業観察を中心に二週間行った。フランス式論文「ディセルタシオン」は、フランスの大学入試から高等教育の学位審査試験、官吏登用試験まで幅広く用いられ、この弁証法をもとにした様式で書いたり考えたりできないと、職業も社会的地位も得られないと言われ、そうであるがゆえにフランスの初等教育から中等教育の教育課程は、すべてディセルタシオンを書くために段階的に綿密に組まれている。 3月の学校調査では、特にフランス語の書くカリキュラムがどのようにフランス式論文執筆に結実していくのか、また文学解釈法と哲学の授業がどのように生徒をバカロレアに向けて準備させるのかを複数のクラスの授業観察と教師へのインタビューから明らかにした。前期中等教育では、私的な体験を離れて議論できる形式(discussion)を学びつつ、文学の内容からスタイル(文体)へと焦点が移り、後期中等教育では複数の視点からひとつのテーマを扱いつつ、文学史の中に分析対象となるテクストを位置づける訓練を行う。後期中等教育においては、フランス語だけでも15~20の課題論文を書き、個別添削により論文を書く徹底的な訓練が行われていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度は、1)試験の論文形式の違いがどのような歴史的的経緯で生まれ、それは社会の要請、また教育の在り方とどう異なるのかを、実際の試験問題の分析を行いつつ明らかにすること、また2)バカロレアの大論述問題へ生徒をいかに準備させるのかを、授業観察およびプログラム(教育課程)から明らかにすることの2点を目標にした。それらの目的に対して、1)については論文にまとめて刊行する最終段階まで行うことができ、2)については、当初リセ(日本の高校にあたる)の授業観察を予定していたが、コレージュ(中学校にあたる)と、小学校まで授業観察を行うことができ、フランスの初等・中等教育全体が掴める調査が行えた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、前年度のフランスにおける学校調査のまとめを行いながら論文にまとめる作業を行いながら、日本の大学入試制度と入試問題の分析、入試の準備教育が中等教育でどのように行われているのかを明らかにする。また、フランスの調査の発展として、24年度の6月には国際オプションバカロレアの口述試験に立ち会う機会を得たので、口述試験および、フランスの形式で日本の内容を試験する新しい試みについても調査研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度の3月~4月初旬にかけて行ったフランスリヨン市の調査の旅費(約二週間の滞在)。および、上記に述べた6月の国際オプションバカロレアの口述試験調査への旅費(約一週間)。フランスと日本の試験制度および問題に関する図書費。学会発表のための旅費を計画している。
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