研究課題/領域番号 |
23531119
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
村上 登司文 京都教育大学, 教育学部, 教授 (50166253)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 平和教育 / 平和啓発 / 平和構築 / グローバル化 / 沖縄 |
研究概要 |
(1)地方自治体が行う平和啓発事業:非核平和宣言をした地方自治体の平和事業を分類し、学校と連携する平和事業について調査を行った。非核平和宣言をする自治体が、2010年には全国の自治体の8割以上となっており、そうした自治体の一部は、戦争体験継承や国際交流事業などの平和事業を行っている。学校と協同する平和事業の分析により、自治体の平和事業を次のように類型化した。a:開催型(学校にとっては児童・生徒の参加・訪問)、b:募集型(応募)、c:派遣型(選出)、d:支援型(資料の利用)、などの類型が抽出された。 (2)平和構築についての意識:京都教育大学の附属桃山小学校と附属高等学校の児童・生徒に対して平和意識調査を行い、平和や戦争についての意識や平和貢献への意識の実態と展開について明らかにした。また、沖縄で面接調査や実地調査を行い、平和教育が地域により相違することを見いだした。沖縄の場合は、沖縄戦の戦争体験についての平和教育が現在でも盛んであり、沖縄の小中学生に対する質問紙調査と学校での面接調査により、戦争体験継承が平和構築にとって重要と理解されていることが示された。 (3)平和構築の教育のカリキュラム開発:京都教育大学で行った「平和教育論」の授業実施を基に、小中高校段階を見通した「平和構築の教育カリキュラム案」を検討した。 以上のように、平和構築に向けた平和教育をシステマティックに研究することは、日本ではほとんど行われていないので、研究をさらに進めることは重要と言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国の非核平和宣言自治体の平和事業の報告書を分析し、また平和事業担当者への面接調査により、平和事業の類型化や、自治体の平和啓発と学校での平和教育との関連性について考察した。 平和教育が熱心に行われている沖縄県において、沖縄戦の体験継承に焦点化した平和意識調査を、小学校(13校)と中学校(22校)の児童・生徒に対して実施した。 京都教育大学の附属小学校6年生と、附属高等学校2年生に対し、平和意識調査を実施した。調査結果を基に、平和貢献意識やグローバル化の意味などを大学教員や附属学校教員と検討した。 平和教育の比較研究として、ハワイ大学を訪問し、平和教育研究者と情報交換を行い、また中等教育学校における平和教育の実践場面を見学し、学校教員に面接調査を行った。 以上のように、児童・生徒に対する意識調査を実施し、学校段階を見通した平和構築教育のカリキュラム化のための資料収集を進めている。ただし、2011年度に計画していたドイツにおける実地調査が今年度に持ち越されたので、昨年度の達成度については上記の評価結果となる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)学校教育における平和構築の教育の実態の分析:東京と広島に訪問し、平和構築の教育における学校と地域社会の協同を調査する。特に広島では、核廃絶運動と学校が連携しながら平和構築の教育をどう進めているかを把握する。広島の平和資料館による平和啓発活動を、平和構築教育の実施方法との視点からとらえ直す。 (2)地方自治体の平和事業や平和構築団体が行う平和啓発活動の分析:平和構築団体が多い東京と京都と広島で、平和構築団体の教育活動を調査する。特徴的な平和啓発活動を行っている団体を抽出し、担当者に面接調査を実施する。面接調査を基にして質問紙調査を立案し、学校と協同する平和事業を行っている自治体の事業担当者に対して郵送質問調査を行う。 (3)平和教育の比較研究:2010年にドイツで行った意識調査の調査協力校(中等学校8校)などで面接調査を行い、生徒たちの平和構築意識の教育的背景を探る。授業観察などの実地調査を行うことにより、平和構築の教育が国によりいかに相違するかを考察する。 (4)平和構築の教育のカリキュラム開発:平和構築の教育のための内容と方法について検討し、学生や児童・生徒の平和構築への参加態度がどのように規定されるかを探る。京都教育大学で、学部と大学院で行っている平和教育論の授業において、「平和構築の教育」のテーマで授業を実施し、受講生の平和教育の実践力に及ぼす影響を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)学校教育における平和構築の教育の実態の分析:旅費を使用して、東京と広島と沖縄に訪問し、平和構築の教育における学校と地域社会の協同を詳しく調査する。 (2)自治体の平和事業や平和構築団体が行う平和啓発活動の分析:面接調査を基にして質問紙調査を立案し、学校と協同する平和事業を行っている自治体の事業担当者に対して郵送質問調査を行う。郵送費、質問紙の印刷費、データ入力のための謝金を使用する。旅費を利用して、平和構築団体が多い東京と広島を訪問し、平和構築団体に対して面接調査を行う。 (3)平和教育の比較研究:旅費を用いて、ドイツを訪問し、いくつかのギムナジウムで面接調査を行い、平和教育インスティチュート(独ハイデルベルグ)で平和教育の実地調査を行う。 (4)平和構築の教育のカリキュラム開発:平和構築の教育におけるカリキュラム開発のための研究会を開催し、カリキュラム案について検討する。報告する実践者や研究者に旅費を支給する。
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