研究課題/領域番号 |
23531120
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
早田 幸政 大阪大学, 評価・情報分析室, 教授 (30360738)
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研究分担者 |
前田 早苗 千葉大学, 普遍教育センター, 教授 (40360739)
堀井 祐介 金沢大学, 大学教育開発・支援センター, 教授 (30304041)
富野 暉一郎 龍谷大学, 政策学部, 教授 (70263499)
齊藤 貴浩 大阪大学, 評価・情報分析室, 准教授 (50302972)
工藤 潤 (財)大学基準協会, 評価・研究部, 部長 (70360740)
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キーワード | 公共政策大学院質保証 |
研究概要 |
我が国の公共政策系教育プログラムの質保証活動については、「地域公共人材開発機構」のプログラム審査委員長を務める早田(本科研研究代表者)が、同機構の評価実務の責任者としての立場からその実相を把握した。 当該年度の中心的な教育研究は、「研究実施計画」によれば、「全米公共政策大学院協会(NASPAA)」のアクレディテーションを受審する米国西海岸の公共政策大学院の訪問調査を通じ、NASPAAの評価基準が、傘下の公共政策大学院でどう運用されているかを把握することにあった。この計画に則って、当該年度は、米国西海岸に所在するカリフォルニア州立ポリテクニック大学ポモナ校、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の各公共政策大学院プログラムを訪問し、NASPAAの評価基準に基づいて各公共政策大学院で実施している自己点検・評価の実施状況、とりわけアウトカム・ベースに立脚した学習成果の測定指標並びにそうした指標を用いた学習成果の測定・評価の状況を把握し、アウトカム・アセスメントの有為性についての検証を行った。 この訪問調査と並行させて、NASPAAのアクレディテーション・システムの検討を書面調査を通じて行った。同調査は、NASPAAがウェブを通じて公にしている政策文書を把握・吟味するという手法で実施した。また、当該年度の書面調査では、NASPAAの現行の評価基準の意義を再確認する目的で、旧基準である“Pre-2009 NASPAA Standards"の詳細をあらためて考察し、その結果を文書に取りまとめ公表した。 加えて、後述するNASPAA本部事務局から届いた公共政策教育の質保証に関する日米2国間連携の提案書の検討を行うとともに、関係機関ともこの提案を巡り情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度については、当初の目的・計画通り順調に進むともに、これを上回る成果も産出し得た、と自己評価できる。その理由は次のとおりである。 過年度の調査研究を通じて、所期の目的・計画通り、大学基準協会と地域公共人材開発機構の評価基準を把握・分析するとともに、それが我が国公共政策大学院の質保証にどう活かされているかを確認するために、複数の公共政策大学院の訪問調査を行った。また当該年度も、所期の目的・計画に基づいて、NASPAAの評価基準が、公共政策大学院プログラムの質保証にどう貢献し得ているかの把握を実体調査を通して行った。とりわけ、そこでは、ラーニング・アウトカム・アセスメントの実施状況の確認とその有為性の検証に意を払った。 次に、調査研究の進捗状況が、「当初の計画以上」である理由を2点に亘って説明する。 第1点は、NASPAAの現行の評価基準とアクレディテーション・システムの的確な把握を目的に、あらためて“Pre-2009 NASPAA Standards"の内容を細部にわたり検証した後これを文書に取りまとめて公表できた、ということである。第2点は、本研究の進捗に併せて交流を深めていたNASPAA本部事務局より、我が国の質保証機関その他の関係者と質保証の国際的相互取組の実施に向け、連携関係を深めたいとの具体的な提案がなされ、当方として所要の対応をとったことである(この点については、改めて後述)。特に第2点目については、米国を代表する専門分野別アクレディテーション団体の一つから、質保証の国際連携の提案が当科研チームに対してなされたことは、極めて大きな成果であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、当初立てた目的並びに「研究計画」に従って、まず、欧州圏における公共政策大学院プログラムに対する実体把握に努める。具体的には、「欧州高等教育圏」の発足を展望して設立された「欧州公共政策教育アクレディテーション協会(EAPAA)」及び欧州圏内での質保証にとどまらず公共政策教育の質保証をグローバルに展開することを目指す「行政大学院・行政研究所に係る世界機構(IASIA)」による外部評価の有効性の把握・検証を行う。そこでは、上記2機関を調査対象とすることに加え、2つ程度の公共政策大学院を訪問調査し、当該公共政策大学院がEAPAAなどからの外部調査に対して、いかなる方式において内部質保証を実施しているかについて把握する。現在、レーベン基督教大学(ベルギー)、ツウェトン大学(オランダ)、ロッテルダムエラスムス大学(同左)、オランダ行政学院(同左)のいずれか2校を訪問することを予定している。 ところで、上述の如く、NASPAA本部事務局より、我が国の質保証機関その他の関係者と質保証の国際的相互取組の実施に向け、連携関係を深めたいとの具体的な提案が示されている。その提案は、すでに、「公共政策アクレディテーションに関する研究・実践における一般的協力体制に関するNASPAAと日本の認証評価機関等との間の協定(案)」として文書化されてもいる。本年度は、上記欧州調査に加え、NASPAAからの提案を慎重に吟味した上で、そのために必要な調査も実施する。 最後に、本年度は、当科研の最終年度に当ることから、3年間の調査研究の成果を総括し、これを報告書に取りまとめた後に印刷物として刊行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、まず、欧州圏における公共政策大学院の質保証の取組状況を把握し検証する。そのために研究代表と他1名の研究分担者(計2名)がそのための調査研究に従事する。これに要する旅費・宿泊費に関する諸経費、訪問調査に備えた準備調査のための諸経費として、約80万円の研究費を使用する(2名分)。 また、すでに行った国内調査の補充調査のため、旅費等を含め、約15万円の研究費を使用する。 さらに、NASPAAの提案に対する対応策を模索するとともに、そのために必要な調査を行うことを目的に、約15万円の研究費を使用する。 最後に、本研究を総括した上でその成果取りまとめ、これを報告書として印刷・刊行するために約20万円の研究費を使用する。
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