研究課題/領域番号 |
23531126
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大塚 豊 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00116550)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 留学中国計画 / 留学生 / 教育交流 / 孔子学院 / 漢語水平考試 |
研究概要 |
建国以来、中国は人材確保の重要な方途として多くの留学生を海外に送り出してきたが、今や留学生の大量派遣国から受入れ国へと変貌しようとしている。本研究の目的は、日中両国が教育分野において今後ますます協力を強める必要があると同時に、厳しく競合しあう関係にあるとの認識に立って、とくに(1)留学生・研究者の派遣と受入れ、(2)自国言語の海外での教育と影響力拡大の2つの側面に絞り、中国が積極的に展開している対外的な教育交流および支援に関する政策と措置の実態を実証的に解明することである。 この目的のため、初年度には中国各地および台湾の代表的拠点大学を選定し、対外教育活動の実際を調査した。訪問調査実施大学は、大陸のハルビン工業大学、瀋陽師範大学、北京師範大学、清華大学、北京理工大学、浙江師範大学、浙江工業大学、江蘇大学、南昌大学、海南大学、新疆大学の各校であり、台湾の台湾大学、政治大学、淡江大学、台中教育大学である。大陸の各大学はほぼ例外なく、対外的な交流を積極的に推進するために、関連施設の整備や管理体制の強化などを行っている。また、中国語の世界的な普及のために設置された孔子学院の統括機関である国家対外漢語教学領導小組でも聞き取り調査を実施した。一方、大陸との教育交流、とくに学位取得をめざす学生の受け入れを2011年から本格的に始めた台湾では、関係法規の整備を踏まえて、最終的に928人の大陸学生を受け入れたが、台湾の学生との利害の衝突や大陸との政治的関係への配慮を行いつつ、次年度以降の受け入れにむけて更なる課題の解決に取り組んでいる状況に関する分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度には、所属大学によってサバティカル休暇が与えられたこともあって、十分に現地調査の時間をとることできた。各調査大学とも、国際交流業務の担当者を中心に聞き取り調査を実施することができ、貴重な情報・データを収集することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度には実施できなかった中国の西南、華南地域の大学における国際教育交流活動の実態について聞き取り調査などを実施する必要がある。また中国語のグローバルな普及を目指す手段としての孔子学院の事例研究として、わが国に既設の孔子学院に対する訪問調査も不可欠である。加えて、アジア各国への中国の国際教育戦略の影響を把握するために、近年、中国が積極的な接近を図り、中国との間の交流関係が活発化してきている国、例えばインドネシアなど、国を限定して調査する必要もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の調査の結果、明らかになった留学生受け入れの問題点などを中国大陸の現地で継続的に実施するとともに、アジアの事例として取り上げる国でのフィールドワークを行い、さらにわが国の既設の孔子学院の訪問調査実施のために旅費を計上した。フィールドワークのみならず、近年中国において刊行されている関連の文献・資料の分析も必要であり、それらの購入と分析のための経費を使用する予定である。
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