研究概要 |
今や留学生の大量派遣国から受入れ国へと変貌した中国の対外的な教育交流および支援に関する政策と具体的措置の解明に努め,とくに①留学生・研究者の派遣と受入れの実態、②中国語の海外での教育と影響力拡大の2側面に絞り考察した。最終年度には、前2年間の調査地域である東北、華北、華東、中南、西北以外の西南地区にある重慶大学、西南大学での調査を実施した。内陸部に位置し国際交流には不利と考えられる両大学は、隣接の東南アジア諸国にはむしろ近いという地理的条件を活かし、各国からの留学生招致に力点を置き、受入れ強化のため、国家的奨学金の他、重慶市長奨学金、大学独自の奨学金も設けている。西南大学には将来中国語教師となることを目指す外国人のための大学院漢語国際教育専攻も置かれている。 次に、中国が進める漢語・華語の普及政策が東南アジア諸国に及ぼす影響を調査するため、インドネシア・ベトナムで実施した小中高校生2452人対象のアンケート調査の分析を行った。5%水準で有意な差が出た結果の一部を挙げると、例えば「家の中で華語を話す」比率は、カンボジア(30.6%)インドネシア(38.3%)タイ(15.8%)ベトナム(15.3%)の順である。また、ベトナムでは過半数の者が華人でないにも関わらず華語を学び、カンボジア、タイでは華人だから華語を学習する者が多い。タイ人回答者は80.1%が華語学習を「難しい」と感じているのに対して、他の3カ国では50~60%にとどまる。難しいのは文法(66.3%)文字(56.0%)発音(54.5%)の学習の順である。 さらに、わが国との比較対象の観点から、中国語・中国文化学習の関連機関や機会が乏しい地域の孔子学院の事例としてアルゼンチンを調査し、孔子学院への期待は大きく、歓迎の度合いが高く、多くの中国語学習者を惹き付け、拠点としての機能を十分に果たしていることが判明した。
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