研究課題/領域番号 |
23531129
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小柳 志津 首都大学東京, 国際センター, 准教授 (20376990)
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研究分担者 |
西郡 仁朗 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (20228175)
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キーワード | 異文化間能力 / 国際交流活動 / グローバル人材 / 国際志向 / 認知的評価 |
研究概要 |
本調査の目的は、大学生の国際社会への参加意欲を高め、異文化への対応力を強化してグローバル人材を育成するプログラムを開発し実施することである。それに基づき、H23年度からいくつかプログラムを立上げ、グローバル人材育成にどのような効果があるかを調査してきた。 まず、H23年度に首都大学東京の国際センター主管で開始したグローバル・シチズンシップ・プログラム(GCP)は2期生となり、①国際活動力強化科目(通年、週1回)、②英語による授業教科科目2科目、③グローバル英語講座(通年、週1回)、④夏季韓国研修(4日間)、⑤春季オーストラリア研修(4週間)の内容を盛り込み、22名の学生が参加した。この4月に最終報告会を行い、無事通年プログラムが修了した。 H24年度にはグローバル・リーダーシップ・プログラム(GLP)という新たなプログラムを開始した。GLPでは、「参加学生達が首都大学東京の海外協定校を訪問し、現地学生達に首都大や日本について説明し交流活動を行うことで、首都大への交換留学で来る学生を増やす」ことを目標とし、GLP生自らがこの目標のために何をすべきか考え、紹介素材を作り、訪問先を決め、相手先と交渉し、現地でプロジェクトを実施することで、グローバル人材育成に繋げることが目的である。H25年度についても既にGCP/GLPとも選考面接を終え、各15名の参加者が決定している。 これらのプログラムに加え短期語学研修2件とともに、プログラムの成果がどのようなものであるのかを調査している。プログラム開始時と終了時の自分のスキルや能力に対する意識について、質問紙調査により把握し、どのような項目で変化が見られたのかを分析している。その結果を今後実施するプログラムに反映したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した実施計画に対しては、いくつかの変更があるが、一番大きい研究項目である「国際活動力強化プログラムの開発と実施」は既に大きなプログラムを2つ実施しており、非常に良好な進捗といえる。 「大学生の国際社会意識調査」については、近年のグローバル人材育成の風を受け、意識や意欲のレベルを確認する前に社会環境的な変化が大きく、学生の意識もそれにあわせて大きく変化していることが日々の学生との接触や事前調査で明らかとなったため、現時点での実施はあまり意味がないと判断した。 「国際社会で必要な能力調査」については、文献や異文化間コミュニケーションの理論を調査し、また、毎年アメリカで行われているSIIC(Summer Institute for Intercultural Communication)に参加してアメリカにおける最新理論やトレーニング法の習得とネットワークの構築を行った。加えて、異文化間能力やスキルについては、上記プログラム参加学生に調査を行い、どのような能力やスキルが開発されているかを分析中である。 「国際交流プログラム調査」については、立命館アジアパシフィック大学(APU)を訪問し具体的なプログラム内容や学内の国際交流の様子を見学することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の進め方としては、まず現在行っているGCPとGLPの発展と改善を行いたいと考える。まず現在行っている「国際社会で必要な能力調査」の質問紙調査に基づき、どのようなスキルや能力が伸びるのか、又は効果がないのか等を検証し、それに基づき改善方法を検討する。 また、現在、海外で異文化間コミュニケーションに関する教育を行っている教員や研究者とネットワークを構築中であるが、これらのネットワークを活用し、異文化間コミュニケーションや文化理解を実際の海外の人々との交流を通して深められるプログラムを考えているところである。ネットを通しての交流やオンライン授業は様々な分野で進んでいるが、異文化間コミュニケーションの分野こそ一番活用しやすい内容が作れるのではないかと考えている。今後、海外とのネットワークをより活発に構築しながら、この新規プログラムの開発を早急に進め、早期に学生が参加できるプログラムとして設置したい。 一方で、グローバル人材に必要とされる能力については、政財界の見解を考慮しながら、文化接触論の立場からきちんとまとめを行い、理論に基づいた能力開発の提案をしたいと考える。特に、奨学金の支給の大幅拡大など、1年程度の留学が盛んに勧められているが、能力やスキルの準備不足がもたらす異文化滞在の危険性も含め、海外派遣前に必要な研修や異文化間能力に対する促進阻害要因などについて発表したいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の進め方に基づき、H25年度の使用計画は新規プログラム開発を中心に考えている。特に、海外大学とのオンライン交流をどのようにプログラム化していくか、海外大学との連携が重要になるため、そのネットワーク構築に研究費が必要と思われる。 また、オンライン交流の仕組みとして、ネット環境やアプリケーション等の設備も必要になるだろうと考える。 尚、科研費の使用実績が24年度は無しとなっているが、これは24年度に限って他の財団からの助成を受けることができ、そちらの使用を優先したためである。
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