イタリアでは、5年生と7年生の合計7コマの授業を観察し、うち、7年生のイタリア語2コマ分、数学2コマ分の授業をビデオ撮影して授業担当者にインタビューを行い、スロベニアでは、1年生、5年生、6年生の合計8コマの授業を観察し、うち、6年生のスロベニア語2コマ分、数学4コマ分の授業をビデオ撮影して授業担当者にインタビューを行った。授業中に語られた教師と生徒のイタリア語・スロベニア語を補助員の助けを借りて日本語に翻訳し分析を行った。アメリカについては、5年生の合計5コマの授業をビデオ撮影して分析した。また、2009年度に撮影した8年生の数学の授業合計4コマのビデオの英語を補助員の助けを借りて日本語に翻訳した。日本では、小学校5-6年生の国語と算数それぞれ4コマ、中学校2年生の国語と数学それぞれ2コマのビデオ撮影し、授業担当者にインタビューを行い、分析を行った。 日本の授業では、音声言語とともに、文字言語も頻繁に用いられており、黒板が重要な授業コミュニケーションのツールとなっていた。イタリア、スロベニアでは、文法の授業を除けばアメリカ以上に音声言語のやりとりによる授業展開が多いことが観察できた。アメリカの授業では教師と生徒がほぼ1対1でやりとりをするコミュニケーションパタンがほとんどであるが、イタリアとスロベニアはそのようなパタンに加えて、教師の発言に対して複数の生徒が同時に反応するというコミュニケーションパタンが多く見られた。イタリア・スロベニアの授業では、教師が質問し生徒がそれに答えるといった枠組みではなく、生徒自身が音声言語で理解の内容を表現する、それを教師が支援するといった枠組みで授業コミュニケーションをとらえるのが適切であるとの知見をえた。 今後は、授業中における文字言語のうち、生徒が使うノートに着目して研究を進めていく計画である。
|